「牛丼は日本で生まれました。アメリカの発明品じゃありません。我が国のオリジナルです。
しばし遅れを取りましたが、今や巻き返しのときです」
「牛丼並盛で」
「並盛がお好き?結構。ではますます気に入りますよ。さあどうぞ。並盛のニューモデルです」
「なにそれ」
「美味でしょう?んああ、仰らないで。つゆが少ない。でもつゆだくなんて見かけだけで夏は熱いし
よく滑るわベタベタになるわ、ろくな事はない。漬物もたっぷりありますよ、どんな
大食漢の方でも大丈夫」
「いや、ふつうに買いたいだけなんですけど……」
「どうぞ食べてみてください。いい味でしょう。余裕の味だ、素材が違いますよ」
「0円で食べられるの?!」
「牛丼を食わせてやると言ったな・・・あれは嘘だ」
「訳が分からないんだけど、けっきょく幾らなの」
「残念だったなあ、トリックだよ」
「いや、そうじゃなくて……」
「まあ落ち着け。銃を突き付けられてはビビっちまって話もできねえ」
「なにそれ」
「今の注文だと生姜抜きだったの?」
「この先どうなるかはお客様次第だ。無事生姜をつけたければ・・・俺達に協力しろ、OK?」
「協力ってなに」
「ビールでも飲んでリラックスしな。牛丼の面倒は俺がしっかり見ててやるよ」
「だからふつう食べたいだけなんだけど……」
「一口では言えん。とにかく店を信じろ」
「標準でいいよ」
「牛丼の後にライスが出来上がるまでは11時間を予定しております」
「牛丼を100円でポンとくれたぜ」
「牛丼100円? 本当に?」
「子牛の煮込みが死ぬほど食いたかったんだ!」
「牛皿じゃねえか。食べたらどうなるんだよ」
「ライスだけで500円か……。どれだけ食べたら500円になるんだ。説明して頂戴!」
「駄目だ」
「もう会うことはないでしょう」