ある状況のなかで、おとなたちには理解しかねる行動に走る学生がいます。ブレーキがきかないというのか、衝動コントロールがきかないというのか、些細なことをきっかけにして、常識では考えられない行動を生起させてしまいます。子ども達は発達の過程でさまざまな経験をし、社会的トレーニングを積み重ね、ストレスに対する耐性や他人との関わり方を学んできたはずです。最近の学生に見られる現象として、彼らには奇妙なやさしさがあり、人を傷つけないし、自分が傷つけられることに極端に敏感です。ある意味では、他者に対する基本的な信頼感が乏しく、人とのかかわりに不安を持っているかのようです。この不安の正体は、おそらく本人にも判らない漠然としたものであり、被害者意識に発展しやすいのです。その結果、些細な刺激、注意、叱責、批判などに鋭く反応し、限度を超えた激しい行動に走ってしまい、解離現象のように呆然と立ちつくすことがあります。
学生たちには特有な下位文化があり、特定の仲間との限定された世界の中で、自己中心的な価値観によって行動するのは当然のことかもしれません。短い言葉で一方的に述べ、それが相手にどのように受け止められているのかについては無頓着なのです。しかし、社会に出ますと、「空気を読み」、状況に応じた行動をとることが要請されることになります。新入社員や若い人たちの言動に、先輩諸氏が辟易としている話はよく聞くことです。