私の周りにはいわゆる夢ってやつを追いかけてがむしゃらになっている人達が居る。
彼等と出会ったのはもう数年前で、その時、僕は同じようにがむしゃらだった。
綺麗事をいつも口にしては青春っぽいなぁなんてしみじみ思いながら、頻繁に彼等と顔を合わせ、時には酒を飲み笑い、時には肩を並べ悩んだりもした。
あれから長い時間が流れて、僕は何度も大きな壁にぶちあたって、その度に彼等に助けられた。
けれどある時、その壁が一向に壊れてくれなくなってしまい、そうこうしているうちに僕はすっかり歩くことを忘れてしまった。
最初はなんとかしよう、どうにかしよう、どうにかなるさともがいて見たけれど、その壁にヒビ一つ入れる事無く、今まで来た。
気づけば彼等はすっかり見えない場所まで走って行って、ここからはその姿を見る事すら出来ない。
僕はひとりになった。
壁を鼻先にぴたり添えたまま、ぼんやり立ち尽くすだけだ。
皮肉な事に、その壁の冷たい感覚だけが僕の自我を辛うじて保たせてくれている。
彼等は相変わらず昔のまま、ぴかぴかと輝いていて、それが僕をより一層悲しくさせた。
僕はもう駄目だ、君たちには僕の分まで頑張って欲しい。
そう言えたらどんなにか楽になるだろうか。
けれどそれを口にしたら最後、僕は今までの僕までも否定することになってしまう。それだけはどうしても嫌だ。
四方八方厚い壁。
その中に素手でぼんやり立つ僕はなんと無様なのだろうか。
過去にタイムスリップできるなら、ただ一つあの時の僕に言ってやりたい。
今すぐ回れ右をして、そこにいる仲間たちの元から去りなさい。
けれども今の僕には、そう願う事だけが生きる源になっているから。
どうかどうかこの些細な欲望だけは見て見ぬふりをしてください。