妹に腹が立つ。
高校の推薦枠で短大に入った後にやっぱり美大に行きたいと言い出した。
昔から美術が得意で高校の頃から美大には行きたがっていたものの美術の先生とそりが合わず結局やめた。
それが突然、美大に行きたいと泣き出した。お兄ちゃんとお姉ちゃんは好きな大学行ったのに、何で自分は、と。
僕は二浪して私立大学に、すぐ下の妹は私立大学も進学していた。双方ともそれなりに希望の大学に。
それが妹にはうらやましかったらしい。上の二人は行きたい大学に行けて、自分は何で行きたくも無い大学なのかと泣いた。
今からしたら結局はお前が短大に行くことを最終的に決めたんだろう、といってやりたいけどその時は勢いに負けた。
なんて妹はかわいそうなんだ、僕は二浪までしてしまった上に私立に入って家計を傾かせてしまった、ごめん、ごめん…
父はリストラされ、年収は最盛期の五分の一。母も共働きで世帯年収は400万がやっと。昔ほどの余裕はまったく無かった。僕にしてもすぐ下の妹にしても株を売ってやっと。
まぁそれを知ったのは僕が大学を出てからだったのだけれど。親は国立の美大、要は東京藝大なら良いという条件付で一年限定で妹の浪人を許した。
受かるわけねぇだろうなぁ、と妹の予備校に行ったり行かなかったりする生活態度を見ていて漠然と思っていたけれど結局受かってしまった。
けれどそれは親が希望していた東京藝大ではなく、授業料がバカ高い私立のT美大。年間240万だって。文系私立の倍の額。
しかもどうやら本人は東京藝大の雰囲気がきらいだったらしく、センターは受けたものの結局藝大自体の申し込みすらしてなかったという落ち。
もうアホかと。結局売る株も無くなった親は国庫から借り入れる形で学費を工面、僕や下の妹も毎月余分に家にお金を入れることでOKとなった。
けれども家計は火の車で、毎月電気代か水道代の督促状が直接家のポストに入れられてしまう始末。
けれども妹はそんなことは露も知らず、バイトで得たお金を学費に回すこともせず、3万は越す電話代も親負担で夏休みは一ヶ月バカンスで遊び歩いていた。
確かに僕や下の妹も大学時代はそれなりに遊んですごしたけれど、その時の状況と今の家の状況は全く違うんだよ、と心の中で思う。
遊ぶななんて言わないし、それが大学生の特権だとは思うけれど、それにしたってもう少しで良いから家の状況を理解して欲しい。酷ではあるけど。