昔バイトで工場で働いていた時、ちょうど一部機械化された時で、現場の人が使いにくい使いにくいって文句を言ってた。現場の人ってのは、システムが変われば必ず文句を言うものではあるけども、それには理由がある。
まず一つ目は人間はシステムに順応しやすい。だから多少機械化された部分が不便でしょうがなくても、少しすれば人間が対応して問題なく動けるようになる。それは人間のよいところなんだけれども、逆に順応しやすいがために新しいものに変わった時に今まで順応して最適化していた作業を新しいシステムに順応しなおさなければならなくなる。これが案外めんどくさい。しかも大幅に変わっていればまだいいんだけど、ちょっとだけ変わりました、とかだとその微調整がいくら人間でも難しい。むしろ微調整は機械の方が得意だ。パラメータをぴぴっと変えるだけだから。人間には慣れるまでの時間がそれなりにかかる。これは結構コストなのだ。
二つ目は、現場の人の暗黙知というやつ。この作業をやっているときはこの作業をつづけてやるからある程度人の間に空間が必要だとか、工場内のこういう人の流れの時が最も効率がいいとか、はっきりとした言葉や文章にはなっていないけど現場の人たちには暗黙のルールがあって、それを持って最適化されている。でもシステム屋さんがいくら彼らの話を聞いてもその暗黙知というのは言語化されていないからシステムには組み込まれない。彼らがこうしてほしいといったことをシステムに組み込んでもだめなんだよね。これがあったらいいというのはあくまでもあったらいいであって今のところなくても問題が起きてない部分なのだ。最も重要なのは「特に不満が出ていないけれどもなくなると困る部分はどこか」ってのを理解すること。これは現場の人は言ってくれないけど(というか認識しているわけではない)、これがなくなるとものすごい勢いで不満が噴出する。今までできていたことができないってのはすごいストレスなんだよね。で、暗黙のルールが破壊されると一気に生産性が落ちる。現場の人が順応するまではかなりの時間がかかるし、もし順応しても以前の生産性には戻らないってこともある。
逆にいえば現場主義の人とか暗黙知とかってそれを言語化し、データ化するだけでもすごい価値のあることなんだろうなと思ったりする。現場はおろそかにしてはいけない。というか人間をおろそかにしてはいけない。その処理能力も適応能力もいまのところシステムには実現できないんだから。