2009-08-23

日本の米価を上げる方法はあるか?

年に数日間しか使わない農業機械を、多額のローンを組んで導入しているのが日本の農業の特徴である。このため生産量や市況がどうなろうとも一定の利益が必要となる。

そこで、米価を一定水準に保っておく事が農業政策の基本となっていた。

機械の導入は労働環境の向上の為であって、生産効率の向上の為ではないという点に、そもそものボタンの掛け違いがある。この掛け違いを無視して、農家が抱えているローンを確実に返済できるようにしなければならないという前提が条件の段階で、無理ですと答えるのが筋なのだが、無理を通す為に知恵を出せというお話である。

過去に実際に行われてきた手段として、減反がある。

生産調整を行う事で、市場への供給量をコントロールし、価格を一定に保つというプランである。しかし、米が高いうえに輸入も出来ないならば、輸入小麦を食べれば良いという話になる。つまり、市場への米の供給量をコントロールしても、購買側は、別の食料を買うだけで、価格の下支え効果は無い。減反をやっている以上、価格の下支え効果は存在しなければならないという事で、政府米入札の制度を使って価格を維持しているが、それとても国民に見透かされている。今は、小麦価格が暴騰した時に高値掴みをしてしまった分を消費しているので、米価格に近い為に、米に競争力が発生している状態にあるが、市況において小麦価格はとっくに暴落しており、この価格が日本の市場価格にも反映されるようになれば、国民は米を食べなくなる。

米価を高値に維持していても、国民は米よりも安い輸入小麦を食べるようになるだけなので、補助金をばら撒いて高い米を作り続ければ、いずれは無駄遣いを止めろという声に繋がる。

減反をやめ、政府米入札の流れを汲む入札制度を廃止して市場に任せれば、米農家の採算性は向上するかというと、米の生産量が増加した時に、生産コストが変化していなければ、当然採算性は悪化する。単位収量あたりの生産コストを引き下げていかなければ市場での競争力は維持できない。農業機械のローン負担は一定なので、減反を止めて生産を増やせば、単位収量あたりの生産コストは低下するが、この程度のコスト削減では追いつかない。

経営規模の大規模化によって、農業機械のコストを相対的に低くするという手法にも限界があるが、ここから先へと踏み出さないと、農家は農業機械のローンで潰れてしまう事になるし、食料をほとんど生産できない農家ばかりの現状をどうにかしなければ、輸入に頼り続けるという事になってしまう。

食料を輸入するには、その分だけの輸出が必要であり、輸出産業を維持しないと、国民が餓える事になる。

輸出産業を潰して円安にもっていって、輸入食料品の価格を高騰させ、価格を維持したまま、相対的に米を安くするという状況は、短期的には解決した事になるが、その先を考えると、一番まずい方法となる。

輸出産業が壊れるという事は、農業機械の生産能力や肥料・農薬の原料確保・加工能力も壊れるという事で、生産能力が減少していくことになる。一度壊してしまった産業は、他の国家がその産業を占めるので、立て直そうとしても立て直せなくなる。

自助能力の無い農業の為に他の産業や国民に迷惑をかける事を正当化しろという話は、どこをどうやってもつじつまをあわせられないので、無理ですと答えるしかない。

  • なぜ輸出産業をつぶして円安にする必要があるのかわからん。円安なら輸出有利になるのになぜつぶすのか?なんか激しく勘違いしてそうな気がする。

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