そこから電車で30分,かけて通った高校は昔戦災で一度焼失したことがある。だから本来なら歴史ある高校だったらしいが,建物自体はそう古くない。
その高校のある街の周りにはお寺があり,川があり橋があり,ちょっと大きなショッピングセンターがあり,よく車の通る大きな道もあった。高校の前には中学校もあり,絶えずにぎやかな声が聞こえていた。
どこにでもある小さな街だと思っていた。
ある日の授業の課外活動で,グループになって街を歩くことになった。詳しい課題は覚えていないが,そこそこ歴史のある街だったのでそういう雰囲気を味わうためだったと思う。古いお寺や,江戸時代に異人がやってきたらしい場所,有名な和菓子屋さん,教科書で見たことのあるような人物の生家跡などにちょっと感動した。
そんな中,橋にさしかかるところの石柱にいくつかの不自然な穴ぼこを見つけた。
ふと見ると,その横に小さく説明書きが書かれていた。
「焼夷弾跡」
バスが走り,子供が騒いでいるその場所にも,何十年もの時間が流れていたことを,幼い私はそのとき初めて理解することができた。