薄暗い時刻、屋内の競技用のプールの周りをぶらぶら歩いていると、対岸に、運動会で見かけるようなテントが一つと、その下に人が何人か集まっているのが見える。
近寄って様子を見てみると、彼らはオシロスコープのようなソナーのような機材を取り囲んで、あーでもないこーでもないとつぶやいている。
周囲を見渡すと、何かのケーブルのようなものが、機材からプールの中に続いている。
彼らに何をしているのかと尋ねてみると「プールの中を調べている」という。
小さなモニターを指さされ、覗いてみるとどこかの海中のような光景が映っている。彼ら曰く、これはプールに潜っているダイバーからの映像だという。
映像は海底というよりは、深い海の断崖のような光景で、ダイバーはまだ海底に至っていないようだ。延々とごつごつした海の岩壁が映り続けている。
俺はそれに疑問を抱かない。しばらく見ていると、ダイバーが壁に埋まっている無数の人間の頭骨のうちの一つ手にとってカメラの前に差し出す。
俺はなんだかひどく不安な気持ちになってくる。俺自身は安全だけれども、何かとても良くないことが起こるのではないかという気持ちがわき上がってくる。
周囲からも「そろそろ引き上げさせた方が良いのではないか」という声が漏れ始めるが、誰一人としてダイバーに戻れとは言わない。