ブルースターを30個集めると、「魔法使い」と呼ばれる人が訪れて、
童貞に戻してくれると聞きました。
本当でしょうか。本当であってくれなければ困ります。
私はもう、生き疲れてしまったのです。
世界がここまでつまらないものだとは、童貞だったころ想像もしなかったのです。
何かにつけて興奮できた、あのころは美しい日々でした。
同級生や女教師のふとももを見て欲情し、官能小説のちょっとした一節にも勃起したあのころ。
母親が持っていたブラジャーのカタログまでオカズにした、あの幼い日。
ほのかに透けるブラジャー。
「あたしと気持ちイイことしない?」と迫って来たサークルの先輩に、文字通り「脳殺」されたこと。
それがどうでしょう。
一度経験してみたら、セックスはあまりにもつまらぬものでした。
あれほど憧れた乳房は、私の二の腕と大差ない、単なる脂肪の塊でした。
あれほど憧れた女性の局部に、興奮するべきところなどありませんでした。
挿入してみたら何も感じないうちに射精してしまいました。
女性は「そのうちちゃんとできるようになるよ」と慰めてくれましたが
何度やっても、――とはいえ、その後ほんの数回しか機会はありませんでしたが――
感動などは得られませんでした。
「いつかセックスする」ことが人生の慰めだった私には、あんまりです。
童貞であったころ、私が生き生きとしていたころに戻りたい。
煩悩を発散するために、夜道を絶叫しながら駆け抜けたあのころに戻りたい。
ですから皆さん、どうかお願いです。
自分勝手すぎるお願いであることは重々承知であります。
みなさまが、せっかく手にしたブルースターを見知りもせぬ私にくれてやる義理など、
どこにありましょうか。
それでも一人の男の人生を救うためだと思い、何とぞお願いしたい。
ブルースターをください。一つでも構いません。
30人優しい方がいらっしゃれば、私は童貞に戻れます。
それに、「魔法使い」がどのような方なのかも、気になるところです。
ブルースターをくださったみなさまの幸せを一生懸命祈らせていただきます。
どうか、どうかお願いします。