ラテン語にponoという動詞がある。置くという意味だ。これの過去分詞形がposit[um]で,置かれたる,という受動的意味が付加される(umは活用語尾)。
日本語における漢語と同様,英語にはラテン語から借用した語がたくさんある。一説によれば45%近くの語彙にラテン語の影響が見られる。positionというのもそのひとつで,「置かれたところ」⇒場所,を示す。
実証主義という言葉がある。客観的に現存するものだけを資料に考えを進めていこうとする立場だ。これの原語が英語のpositivism。置かれたもの=実在を扱うことを示している。たとえば法実証主義 (Legal Positivism) は,道徳や宗教など他の倫理規範を援用せず,条文と慣習・判例のみを用いて法の解釈をおこなう。
近頃ポジティブシンキングという語を聞く。何を意味するか詳らかでないが,おそらくは事実に基礎をおく実証的思考のことを指すものと思われる。