わたしをそのSNSに誘ってくれた上役の人が、なんていうか、頭の悪い人だというのがわかってきたのだ。
さっきも「増田さんはMLの投稿のしかたがおかしい、これでは配信されないはずですよ!」とか鼻息荒く電話がかかってきたのだけど別に普通に配信されてきたし、それを伝えると新たにテンパりながら「件名にちゃんと連番が振られてますからね!大丈夫ですよ!」となにかわたしを励ますかのような口調で言いながら一方的に電話を切ってしまった。わたしは何もおかしなことはしていないはずなのだけど、MLの仕組みは自分がいちばんよく知っているのだから無知な若者を啓蒙せねばならない、というふうに思っているようで、ことあるごとにそういう見当違いの突込みが入ってくる。とても疲れる。
他にも「○○の件はどなたにうかがえばよろしいでしょうか?△△さんですか?それとも上役さんでしょうか?」というような他の人の質問に対して「わたしは知りませんよ?なぜわたしに聞くんですか?」みたいな無意味に切れてる返信を返しておしまいとか、会議の場で他の人の言うことをさえぎって違う話をし始めたり、今まであまりよく知らなかったが、どうもそういう困った面を持つ人らしい、というのがわかってきた。
さらに困ったことに、彼女は自分のそういう面をしっかりと自覚している。
自覚しているのに直そうとしていない。
開き直り、と言うとあまりにネガティブだが、つまりそういうことだ。
自称「わたしって、思ったことははっきり言わないと気がすまないたちだから」女なのだ。
彼女と付き合いの長い穏健派の先輩に聞くと、精力的にいろいろな活動に顔を出しては言いたいことを言っていくため、敵も多いらしい。
それってさ、と思った。
「思ったことをはっきり言う」から敵が多いんじゃなくて、単に他人への配慮ができなくて煙たがられてるだけなんじゃないの、と。
先輩も、はっきりと口には出さないが同様の思いを抱いているようで、彼女とは一定の距離を保ちながら付き合っている。
彼女本人は、自分の「さばさばした性格」が日本の空気に合わないせいだと思っている。
しきりに海外の知り合いのことを話題に出したりして、自分にはどっちかというと西洋文化圏のほうが肌に合うんだというようなことを言う。
気持ちはわかる。言いたいこともわかる。
でも、やっぱり違うと思う。
彼女がいくら竹を割ったようなはっきりした気性の持ち主で、言いたいことを率直に言わずにおれない性格であっても、言うことが筋が通っていて説得力のあるものであれば、こんなふうにわたしみたいなぺーぺーの新人から嫌われることなんてないはずだし、がんばってるわりに支持者がこれだけ少ないなんて状況も生まれないはずなのだ。
やっぱり、彼女が言うことばがいつもどこか見当違いであったり、ほとんど無意味に攻撃的であったり、同席者の話の腰を折ってまでわざわざ訴えるほどの価値のあるものでもない、というようなことが積み重なって、彼女はコミュニティから孤立しがちなんじゃないかと、思うのだ。
SNSに誘われた、ということを話したとき、先輩は彼女との付き合い方について事細かにアドバイスをくれた。
××さんとは喧嘩中らしいから、とか、□□さんとはそりが合わないっていつも言ってるから、とか、彼女が嫌っている人を詳しく教えてくれた。なぜそんな情報ばかりを提供してくれていたのか、実際に近くに行ってみてわかった。
彼女が嫌われているのは決して不当なことではない。
嫌われ者には嫌われるだけの理由がある、それだけのことなのだ。きっと。
わたしも先輩に倣い、上手な距離の置き方を考えようと思う。
まず「仕事関係のSNS」なんてものに所属しなければならないと思うだけでゾッとするわ。 友人しかいないSNSですら、わずらわしいことがあるのに。