じいさんはもう長いこと寝たきりだ。
脳の血管が詰まって倒れて以来ずっと、ばーさんが身の回りの世話をしている。
先日帰ったときには、もう口からものを食べることができず、身体に穴を開けてそこから流動食を流し入れるようになっていた。
それでもにこにこ笑いながら「長生きしてよ」と話しかけているばーさんを見ていると目から水が流れそうになってなにもしゃべれなくなってしまう。
小さい頃からじいさんっ子だった。らしい。
裏の川でうどんをえさに魚を釣ったり。
じいさんの運転する耕耘機に乗せてもらったり。
小さい頃のじいさんとの思い出もいっぱいある。
嫁に行く前写真を整理していたら、振り袖を着た自分と普段着のじいさんのツーショット写真を見つけた。
照れたようなじいさんの顔がなんだかかわいかった。
あの頃のじいさんはまだ普通に自分の足で立って歩いていた。
寝たきりになっていたじいさんには結婚式に出席してもらえなかった。
ベッドの上でなんだか分からないことばをふがふが言ってるじいさんはとても小さくなった。
たぶんきっと、もうあまり長くないのだろう。
飛行機に乗らないとじいさんに会いに行けないトコロに住んでいる自分は年に1、2回しかじいさんに会えない。
最近は、もしかしたらこれが最後になっちゃうのかなぁと思いながら会いに行く。
ふがふが言ってるじいさんが、自分のことを認識しているのかどうかももう分からない。
それでも。