のだめカンタービレで千秋はのだめのことを「人間的に駄目」って扱いしてるけど,話全体を通して人間的に駄目なのはどっちかっつと千秋のほうなんだよな。考えてみれば千秋の初登場(=物語の始まり)から,千秋は「俺様千秋様」とか言われてそのわがままっぷりが近隣に知れ渡っていた。彼がそれでも一定の位置をキープできているのは明らかに,彼が住んでいる世界(音楽的能力が高く評価される世界)において彼が能力的に優れているからに他ならない。まあ彼の場合は三善のおじさんに「仕事も出来る」って評価をされてるから,その辺の会社に入っても似たような態度を取れるかもしれないけど,でも今のようにはいかないだろう。
一方でのだめは確かに抜けたところはあるけど他人を愛していて,出会う人皆に好かれる,人間的には相当いい線いってると思う。のびたじゃないけど,他人の幸せを喜び,他人の不幸を悲しめるようなところがあるしね。千秋はそういう感じがない。基本自分中心という描かれ方は徹底してる。
だから,物語全体を通して千秋がどこに行ってももてるのは,彼が音楽界に住んでいて,音楽的能力に優れていて,見た目がいいからなのであって,ちょっと深く付き合えばすぐしんどくなるような性格だと思うんだけどね。漫画的表現なんだろうけど基本文句ばっか言ってるし。多分出演時間の8割超怒ってると思うぞ彼は。
まあそこはシュトレーゼマンにはしっかり見破られてて,「そういうのやめなさいよみっともない」とたしなめられてる。その場では素直に聞いてなかったけどね。お母さんにも似たようなこと言われてるし,周りの大人は気付いてるってことなんだろうな。そういうとこは非常にリアルだ。
つまりあの物語は,基本千秋視点で描かれているってことなんだろう。考えてみれば,千秋が妙に否定するのだめ,峰,真澄といった主要登場人物は,千秋以外からは結構評価されてるんだよな。のだめのことを嫌いな人は出てこないし,峰はSオケのリーダーとしてみんなに慕われてるし才色兼備の彼女もいる。真澄はなんとも言いがたいけど否定されてはいないよな。逆に,千秋が肯定する黒木君とか名前忘れたけどチェロの人とか(坊主に眼鏡ですげーチェロうまい),人間的には駄目なんだよな。まあ黒木君は俺は好きだけど,彼自身は自分のコミュニケーション能力には不満を抱いているだろう。
つまり,千秋は基本人間のことを「音楽が出来るかどうか」で見る癖がついているということだ。そういう彼目線で見ると,黒木君,チェロの人,清良,そして彼自身は「人間的に素晴らしい人たち(本当は人間的にはアレだけど音楽的には素晴らしい人たち)(清良はいい子だけどね)」となり,峰,のだめは「人間的にはアレな人たち」となるわけだ。彼がこの先ずっと音楽界で生きていくならそれでいいんだろうけど,彼が今形成していっているのは音楽界でしか通用しないアイデンティティとでも言えるものなので,外出たら不安定になるだろうね。まあまさかそんなのは描かれないだろうけど。もしそういう事態になったら,千秋はのだめのすごさに気付くんだろうと思う。あ,そういう風に考えるとちょっと描かれる可能性もあるのかも。アイデンティティってのは一旦揺れるとさらに強固なものになるって性質があるから,千秋は少し音楽以外の部分で悩む経験をすればもっと魅力的な人間になるんだろう。ああ,でも音楽家ってのはそういうの超越してたほうがいいような気もする。
面白かった。千秋がのだめのすごさを思い知るような展開はありうると思うよ。読んだことないかもしれないけど、同じ作者の「天才ファミリーカンパニー」というのの主人公がやはり千...
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