母は一時アルコール依存症になったが克服、仕事をしながら実家の敷地内で店を経営している。
19歳の長女は高校卒業時に上京、父が亡くなった後地元に戻り就職、転勤の後結婚。
17歳の次女は父が亡くなった時高校を中退、通信制高校を2度中退、アルバイトを転々としている。
父が亡くなって7年
初孫を楽しみにしている母親には、彼氏と呼ぶ男性が毎日家に来ていて 店はその男性が営んでいた。
長女はそのことを聞かされていなかった。
長女が作る夕飯を母は一緒に食べず、その男性の分を分け店で2人で食べていた。
母は『入籍するつもりはないし認めてもらおうとも思っていない。この土地を一緒に守ってもらう人だ』と長女に告げたが、長女の夫と外食に出かけるとき、母は男性を連れて行きたいと長女に申し入れた。
長女はそれを断固拒否、その男性の話を今後一切しないでほしい、夕飯は家族で食べてほしい、その男性の分まで自分に夕飯を作らせないでほしいと母に告げた。
次女はその男性について母から言われていなかったものの、うすうす感付いており最近は店に近づこうとしていなかった。
生前の父は厳しくも優しく、仕事熱心で、しかし休日になれば家族みんなで過ごすことを第一に考える人間だった。
父が亡くなったこの家は庭も荒れ、家の中も掃除がろくにされず、荒れ放題乱れていた。
母も次女も会話が少なく、次女はぶくぶく太りだし、体脂肪率40%を超える巨漢になり
衝動買いを続け、服と化粧品がどんどん増え、お金がなくなったら母の財布からカードを盗み、銀行口座から金を盗っていた。
それに気付いた母は次女を叱った。
次女はクレジットカードを作り、キャッシングをし、買い物を続けた。
部屋は洋服とお菓子のくず、化粧品の粉や髪の毛、煙草の吸殻や灰が舞う 荒れた部屋だ。
掃除という行動を知らないのではないかと思わせる部屋。
その部屋を里帰りをした長女が見て、次女を怒りつけたが次女はそれを受け流し、掃除しようとはしない。
長女は次女のいない間に片付けを行い、ガラクタを黙って捨てた。
帰ってきた次女は、片付いた部屋を見て長女に対して何も言わず、買ってきたお菓子をベッドの上で横になりながら食べていた。
片付いた部屋をまた汚しながら。妊婦のいる部屋で煙草をふかしながら。
長女はお腹の子に悪いと思いつつもイライラを抑えられない。
母に『次女の言動や行動に対して、どうして叱ったり注意をしないのか、次女をもっと怒ってほしい』と伝えると
母は『小さい頃からの育て方が悪かった。実家を出る気がない次女にはさんざん言ってきたが、改善が見られない。次女の面倒は私が一生みる。』と言った。
母はさらに『これ以上次女のことを怒らないでほしい。もしまた自殺未遂を起こしたらと思うと、私ももう次女を怒ることはできない』と言った。
長女は、里帰りしなければよかったと夫に泣いて電話で伝えた。
父はいつも本気で叱ってくれた。あのころは大嫌いな父だったが、今思えば本当にありがたいことだったのだ。
父は、今の現状をどう見ているのだろう。
父が、生きていたら何と叱ってくれるのだろう。
しかし父はもうこの世にはいない、それどころか、父がいればこの現状はない。
長女は臨月のお腹をさすりながらお腹の子供に謝っていた。イライラしてごめん、あなたには私がいるよと。
その頃、次女の部屋には食べ終わったアイスクリームの棒にアリが集り
要するに母ちゃんが子ども過ぎたんだ。母ちゃんをそうさせたのは「厳しかった父ちゃん」の責任でもある。母ちゃんも長女も次女も「父の死」を未だ受け容れることが出来ていないよう...