2008-04-08

聖火妨害について

ロンドンパリ聖火リレーが妨害されたことは中国でも報じられた模様。

このことはどういう結果をもたらすだろうか。

この聖火リレー妨害は、中国(=中国政府)が抑圧する人権問題チベット問題に対する抗議として行われたはずだが、こうした抗議活動が中国人民の心に響くかといえば、そうではなく、むしろより怒りを買うのではないかという気がする。

こうした心の動きはおかしなことではない。

アメリカ圧政国家経済制裁をかけたりするが、制裁をかけられて困窮するのは現地の住民である。この困窮に対する怒りは往々にして圧政を敷く自国の政府に対してではなく、アメリカそのものに向かう。

これと同様に、欧米から中国への抗議を目の当たりにして、中国人民は自国政府のやり方が悪かったのかも、と考えるよりも、欧米から発せられた抗議の声に対して敵対心を露にするのではなかろうか。

こうした中国人の怒りが世論となれば、一党独裁国家とはいえ世論を無視することもできなくなった中国政府欧米価値観に対し、これまで以上に距離をとることになるだろう。

また、中国人民はこの抗議の発生した根本的な原因を「一部のチベット独立分子」のせいだとするかもしれない。そうなれば、この抗議をやめさせるために、人権尊重よりも自国の強大な政府がよりチベットに対して抑圧的な政策をとることを支持するかもしれない。

これらは推測に過ぎないが、ありえないシナリオでは全くないだろう。

聖火リレーの妨害はチベット問題の改善という目的を達成するための手段であるはずだが、現段階を見ていると、手段が目的化していく様相を呈してきているようである。

もちろん、抗議の意志を表明することは大事だ。しかし、それが相手に受け入れられなかったら、と考えると戦慄する。

それともやはり、抗議に耳を傾けようともしない中国政府および中国人民が全ての責任を負うべきだろうか。

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