2008-03-07

青い鳥

昔々、不幸な兄妹がいました。

不幸だった兄は幸せを招く青い鳥を求めて国中を尋ね歩きました。村に行き、街に行き、城に行き、隣国へ行き、探し求めました。ですが見つからず、旅の資金もつきたので、一旦、家に戻ることにしました。疲れ果てて家に帰ると何とそこには青い鳥が鳥籠の中に入っていました。兄は疲れているのも忘れて全速力で青い鳥を手にとって確認してみると、それは青い鳥ではありませんでした。確かに一般的に言えば青い鳥でしたが、それは兄が求めている青い鳥ではありませんでした。少し青色が薄かったのです。ガッカリした兄は手の中にある青い鳥を放しました。

その程度の青い鳥なら、村にでも街にでも城にでも隣国にでも、どこにでもいました。ですがそれらは兄が求める青い鳥ではなかったのです。青が薄かったり濃かったり、羽が小さかったり大きかったり、鳴き声が低かったり高かったり。兄が求めている青い鳥とは違っていました。だから捕まえては放し、求める青い鳥を探し続けていたのです。兄はガッカリすることには慣れていたので、家に置いてあったお金を手にすると、また青い鳥を探す旅に出ました。

一方、森へ食料を採りに行っていた妹が家に帰ると、家が散らかっていました。物取りかとも思いましたが特になくなったものもなく、兄のへそくり場所を中心に散らかっていたので、すぐに兄だとわかりました。兄に会えないのは残念だったので、次からは兄への手紙を兄のへそくり場所に置いておくことにしました。手紙を書き、仕舞い終えた妹は、いつものように森で採ってきた食料を鳥と一緒に食べて、一緒に遊び、そして寝ました。

数年前。兄が旅に出た頃のこと。妹は大きい鳥に襲われてる一羽の雛を助けました。それが妹と鳥の出会いでした。親鳥は大きい鳥と戦い死んでしまっていたので、妹が親代わりとなって懸命に雛を育てました。その甲斐あって雛はすくすくと成長し、妹を本当の親のように慕いました。だから家ではいつも一緒です。鳥籠に入れるのは妹が森に食料を採りにいくときだけ。本当は森へも一緒に行きたいのですが、森には大きい鳥がいるので家で鳥籠の中にいる方が安全なのです。

妹は鳥の傍で幸せそうに眠り、鳥も妹の傍で幸せそうに眠っています。妹は鳥が大好きだし、鳥も妹が大好きなので、毎日が楽しくてしょうがないのです。妹と共に幸せそうに眠りながら、鳥はまた少し青くなりました。

記事への反応(ブックマークコメント)

ログイン ユーザー登録
ようこそ ゲスト さん