今、僕は荒井君のようになりたい。
当時の僕は非常に外交的で、成績もかなり良い方で、部活動も楽しく、毎日が充実していた。
一方の荒井君はあまり成績も冴えなくてとても地味な奴で、正直言って、彼とはあまり話したこともなかった。
当時は、荒井君に対して「こんな地味では楽しくない。ああはなりたくない」と思っていた。
だけど、今にして思うと、あんなに冴えない奴でも、赤点連発の数学の試験で赤点を取ったのを見たことがないし、地獄の体育の授業にも音を上げずについてきたし、音楽でやらされた歌の発表もそれほど酷かったわけでもなかった。聞くところによれば、彼女もいたらしい。
非常に内向的で、成績もぱっとせず、サークル活動などやらず、毎日が寂しい有様だ。
まるで僕が荒井君だ。
だけど、荒井君と違って僕は偏屈な課題にはすぐ音を上げるし、単位はよく落とすし、実験もへたくそなまま上達しない。彼女もいない。
こんな地味で駄目な奴ではいたくない。もっと派手になって周りから注目されたい。
昔を思い出してそんな風によく思うんだけど、それは間違いだなと思う。
派手に生きる必要はない。荒井君でいい、いや、荒井君のようにあるべきじゃないかと。
僕も荒井君のように、地味でもとにかく何でも必死に取り組みたい。
僕は荒井君になりたい。
※迫真性を増すためにリアルで実名だが、彼も僕もまず特定されないのでよいかと思う。