2007-04-29

ピューマ哀歌(エレジー)

小学生というものは、何処までも呆れるくらい純粋で、その単純機械のような純粋さで、

時にトンボの羽を毟ろうとして、本体を真っ二つに裂いてしまう生き物である。

そんな小学生の直情、短絡的な行動原理に基づいた無邪気に人を傷つける行為は、

あだ名」に集約されていたかに思われる。

顔が四角くて、テンパだった女の子クラスの悪ガキに「ペヤング」というあだ名が付けられていたが、

此れなどは、今思えば彼女人格形成に深刻な影響を与えたかも知れない。

そんな即効直球ど真ん中ネーミングの犠牲者が居た。

私の小学生時代のオフィシャルな格好はジャージであったのだが、このジャージ、油断をすると

おかん」が高確率で偽者を購入してしまうのである。

(例)

 アディダスアディオス

 スーパースター→スペース・スター

 プーマ→ピューマ

全く、今もってもそういうのが何処で売っているのか不思議なほど、

おかん達は微妙な偽ブランドを持ってくる訳であった。

当時のクラスの中には、純正派が台頭していたこともあり、

この偽ブランドや訳の分からんメーカージャージの持ち主は、粛清の対象となっていた。

そんな中、「ピューマ」を着てしまった者が居たのである。

それはプーマと比べると、全体的に細かったり、尻尾の向きがおかしかったりする、紛れもない「おかんジャージのピューマ」であった。

しかしながら、このピューマジャージの悲劇は、その持ち主の名前が「星」だったことに極まれる。

「星ピューマ」

魑魅魍魎うずまく小学生の脳髄に、この間抜けな語感は十分すぎるほど響いた。

かくして、ドッヂボールの達人だった星君は、真正の「アディダス帽」を被り、

キャプテン翼の若林君を気取るまでの1年間はこの不名誉な名前をいただき続けたのであった。

実に20年近い歳月を経て、このネット上に本名を晒された星君は、

昨今のコピー商品の蔓延を訴える格好のキャラになれば良いと思ったが、

良く考えたら「偽者、かっこ悪い」と云う人間が「星ピューマ」であったら、お前がコピーやんけという誹りを免れず、

結局、星君は何で本名をさらされたのかということになり、此処に世の中に数多ある哀歌が一つ増えることとなるのである。

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