ある日、私は『街』を1日中歩き回ってみた。
風が吹くだけで崩れるような砂の城をせっせと作っている人がいた。
隣にはその砂の城の素晴らしさを真剣に説いている人たちがいた。
体中に要点だけをまとめた紙を貼り付け、相手の目を見ず、
その紙を見ながら口げんかをしている人たちがいた。
最初は押していたのに旗色が悪くなると、
反論するための紙を探している姿は滑稽だった。
本屋に入った。
批判しか書いていないストレスの溜まる本ばかりが置いてあった。
批判的な内容が書かれていないのは、アニメ系の雑誌くらいのものだった。
歩き疲れたのでカフェに入った。
おしゃれなデザイナーズチェア、凝りに凝った照明、小奇麗なスタッフ。
いかにもカフェといったラウンジ系の音楽の中で、出てきたコーヒーは、ネスカフェだった。
映画館に入った。
「当館では続編は流しません」という張り紙を横目に、久しぶりに「ターミネーター2」を楽しんだ。
再び『街』に出る。
時はすでに夕刻を告げようとしていた。
路上で暴行を受けている人がいた。
誰もが見て見ぬふりをして通りすぎていく。
暴行を受けている人の傍らには、火がついたばかりのタバコがあった。
中央通りを歩く。
この『街』にはやたらと広告が多い。
広告のために『街』があるのか、
『街』のために広告があるのかがわからなくなる。
しかし、あれだけの数を目にしたにもかかわらず
覚えることのできた商品名は1つもなかった。