先天性疾患や慢性疾患のお子さんを持つお母さん達のコミュニティをまとめているのは、「かわいそう」というルール。
元気な子供の母親は、状態の悪い子供の母親を「かわいそう」と思う。
状態の悪い子供の親も、もっと悪い子供を見ては、「かわいそう」とまた思う。
本当に具合の悪い子供は、寝たきりで、痰も出せない。酸素が手放せない。
自分ではもちろん食事も取れなくて、生まれてから10年ぐらい、ものも言わずにずっと病院の奥で過ごしている。
具合の悪い子供は簡単に肺炎になって、呼吸状態が悪くなる。そのたびに集中治療室は大騒ぎ。
具合の悪い患者さんには、人工呼吸器が必要。呼吸器管理が長期間になりそうな人は、最初から
気管切開をしてしまったほうが、合併症が少なくて管理がしやすい。
お母さん達は了承しない。
病院の中で一番「かわいそう」な子供というのは、上手に呼吸ができないから気管切開を受ける。ここが終着点。
お母さん達は、みんなで「かわいそう」を共有して、病院の中で一つにまとまる。
入院期間は10年以上。まとまらないと、時は越えられない。
気管切開を受けた子供は、声が出なくなる。出なくなるのは子供の声だけではなくて、
そのお母さんもまた、「かわいそう」という声を失って、コミュニティから追放される。
声を出す側から受ける側へ。
小さなコミュニティでの立場の変化というのはものすごい恐怖らしい。
お母さん達は「自分の立場」と「子供の命」を天秤にかけて、泣きながら悩む。
「あのかわいそうな子供」になった子供は、もう声も出ないし、手もかからない。
お母さんは、みんなの「かわいそう」を浴びながら、穏やかそうに座っている。
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