2007-02-02

逃げる自分、醜い自分

プロジェクト派遣社員の子を採用した。

最初は幸せだった。初対面で直感したとおり、これまでの仕事に恵まれなかっただけで、彼女の知性にはキレがある。コミュニケーション能力も高い。経歴で判断できるよりもずっと仕事ができるはずだ。そして仕事をどんどんまかせた。どんどん育っていった。でも、そのうちあれ、と思った。自分のプロジェクトのはずなのに彼女にのっとられている?

自分は正直コミュニケーション不全である。対人恐怖の本性を経験年数と業務知識でカバーしているだけだ。そもそも心の底から他人が嫌いなわけでもないのだが、コミュニケーション手法がぎこちないので、他人からはどうしても距離をおかれてしまうタイプ。他人を愛しも他人から愛されもしないタイプ。経験値が足りないため、対人コミュニケーションスキルは洗練されず、年齢を重ねているわりにはきめ細やかな心配りができない。他人の当意即妙な反応を見て自分もそういう反応をすればよかったのだ、ということを思いつかなかったことにショックを受ける。心を許せる友人も職場に誰ひとりいない。仕事をこなすだけで精一杯。他の人間から飲みにさえ誘われない。寂しい。しかし寂しいながらも自分のプロジェクトだけはきちんきちんとこなして成果を挙げているのをただひとつの心のよりどころにしていた。

ところが、彼女は巧妙である。雑談から入って他人の心をつかむことにたけている。頑固なおやじも篭絡。お局さまのお気に入り。自分のミスは最小限に見えるようにふるまう。たちが悪いことに、それに悪気はまったくない。素だ。裕福な家庭に育った愛される末っ子不器用な長子に比べ、親の愛を得るための立ち回りが格段にうまい末っ子だから。その反面、他人のミスが大きく見えるよう、他人の判断ミスについては大きく見えるよう人に吹聴する。処世術だ。派遣契約を切られることのないよう。人事権のある人間にアピールするよう。メールで。女子トイレで。ランチの場で。休日飲み会で。こちらが入り込めない場で。

プロジェクトリーダープロジェクトを把握していない、リーダーをたててアシストしているけど、本当の実権を握っているのは自分。彼女は遠まわしに周囲に信じこませる。周囲はあっという間に信じ込む。だってあんなに賢くて信望の厚い、お局さまも一目置く、彼女の言うことなんだから。業務知識よりコミュニケーション能力が大事。実際に行っている作業の質や量より、他人に与える印象の方が大事。「彼女、感じがいいし、がんばっているみたいだし?」

そうして、リーダー意見は聞かれず、彼女意見がまっさきに聞かれることになる。こんなはずじゃない、なんで、と焦ってリーダーは自信を失い、ますますミスを増やしてしまう。周囲の信念は強化される。やっぱり彼女の言ったとおりじゃん。頼りになるのは彼女じゃん。

そうしてプロジェクトはゆらぎはじめる。…船頭は一体誰なんだ?

というわけでごめんなさい、私はもう耐えられません。船をおります。なぜこの小娘に負けたのか、プロジェクトから離れてゆっくり考えてみたいと思います。

  • プロジェクトと名が付くんだから、それを成功させることが最優先だろ。誰が実権を握っているかなんてどうでもいい。 嫉妬心で勝手にプロジェクトから降りたり、「巧妙」とか「小娘...

  • う〜ん。 不器用な長子に比べ、親の愛を得るための立ち回りが格段にうまい末っ子 には同意出来ない。末っ子はいつも、兄とか姉を見ているんですが。 末っ子にとっては、 親>>兄...

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