ガラガラの電車の乗客は小さな子供を連れた母親かお年寄りがほとんどだ。
ミニスカートの女子高生はいないけれど、僕はガラガラの電車が好きだ。
それは間違いだ。彼らは特段イライラしてるわけではない。
そのときイライラしているのは僕だった。彼らは慣れている。イライラしてるどころか、
その中身は無機質だ。ロボだ。ロボに囲まれて、僕はオセロのようにロボになりつつあった。
きっと僕はそれが嫌でイライラしていたに違いない。
ガラガラの電車に乗る。うちの地域は昼前には大抵曇るので風景はつまらない。
僕はここでなら人間のままでいられるからだ。
ふと横を見ると、とてもだらしのない格好でサラリーマンが寝ていた。
ふと手を見ると、いつの間にか鉛色のガントレットを身につけていた。