2009-03-23

鞄持たない主義と公言している男性がいたのでふと思い出した元彼

元彼も鞄を持たないタイプの人だった。財布をジーンズの後ろポケットに入れて、ケータイを前ポケットに入れて、それだけで移動するという人。男性にはそういうタイプの人がそれなりにいるので、ずいぶん身軽だなー程度に思っていた。

私はどちらかというとなぜか荷物が増えてしまう方で(化粧品は持ち歩かないタイプなのだが、なぜか荷物は多い)、いつもわりと大きめの鞄を持って、買い物をしたら全部そこに詰めて荷物はいつも一つ、せいぜいふたつに分ける程度である。これは今も変わらない。

身軽と言ってももちろん荷物が増えることもあるわけで、そういうとき彼はいつも私に「そのバッグに入れさせてよ」と言った。私は特に構わないと思ったのでいいよ、と答えることが多かった。彼は買い物好きだったから、買い物でどんどん荷物が増えていってしまうのだ。自分からすると小分けになった袋をたくさん持って歩くのは忘れる確率が増えるのでどうなんだろうなぁと思っていたのでむしろ喜んで鞄に入れてあげていたくらいだった。

そんなことが日常となっていくうちに彼の頭の中では、私=荷物を持ってくれる人になってしまったようで、買い物をした後の袋を全部私に押し付けてくるようになった。そのうち「持ってくれる?」とすらも言わなくなった。長い付き合いだったから、日常の中にまぎれて私もあまり気にしなかった。あまりにも重い時は断ったが、そうすると彼は不機嫌そうな顔をするのだった。

さらにそんなことが続いていくうちに、買い物以外の荷物も押し付けられるようになった。デジカメ入れてくれ、ちょっとノートパソコン持ってかなきゃいけないんだけど持ってくれ、そのうち持ってくれということもなくなり勝手に鞄に入れたり、私が愛用している自転車のかごの中にどさっと入れたりして当然というような顔をするようになった。たまに私が不機嫌になると、何で不機嫌になるのかと逆に不機嫌になるようになった。荷物が重いので疲れたからどこかでお茶しようというと、まだ自分大丈夫だからいいでしょとすげなく却下し、日射病になりかけてふらふらしたりめまいがして動けなくなるまで買い物に付き合わされたりなどした。しかも動けなくなると何でもっと早く言わないのかとくどくどと説教すらした。

彼のことをかわいがっていた年配の方に私もかわいがられていたのだが、その人いわく「あいつは気がきかないからなぁ」だった。そうなのだろうかと納得しかねる思いでいたが、そうなんですよねと答えることしかできなかった。何そんなにたくさん持ってるの?と言われると、「これ半分くらい私のじゃないんですけどね」「……いやーもっと尻に敷いた方がいいよ。あいつガツンと言わないとわからないから」などという会話をしたりなどした。

どこで、そういうのはやめてほしいというべきだったのか、今でもよくわからない。最初はよかれとおもってやっていたことだった。それが少しずつ少しずつ彼があまえ、私がそれを諫めず、そしてエスカレートしていったのだった。確かに彼には問題があるだろう。だが、私に問題があるとすればどこだろうか。

そんなことを考えながらコンビニで買った品物を受け取ろうとしたら、彼が言った。

「まーたどうしてそう重い方持とうとするのかな!俺が重い方!肉まんでも持ってろ!」

難しく考えず、相手の意向を伺わなくても、自らどうしてほしいか言ってくれる彼は本当に優しいなと思った。

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