2007-04-19

突発カラオケOFF 嘘レポ(1)

増田太一郎は焦っていた。

待ち合わせの時間が近いのに、電話が一向に繋がらない。

「おかけになった電話は、電波の届かないところにあるか、電源が入っていないため、かかりません」

冷たいメッセージにリダイアルを入力しながら、太一郎は人込みの中を急いだ。

新宿は何度来ても良くわからん…」

そもそも電車を降りて逆方向へ進んでしまったのが誤算だった。時間までもう5分を切っている。充分に早く駅には着いたのに。待ち合わせはアルタ前の交番、もうすぐ見えてくるはずなのだが。相手に「迷っているので遅れる」と電話をしようにも繋がらない。早く、早く着かなければ。

交番に着いて見回せば、人待ち顔の人、人、人。

誰が待ち合わせの相手なのだろうか。顔のわからない相手に対し、太一郎はもう一度携帯電話をかけた。

太一郎が相手の顔を知らないのにはわけがある。

はてな匿名ダイアリー匿名日記が集まる所。そのうちの一人が設置したやはり匿名チャットでつい13時間前に文字で話しただけの相手にカラオケに誘われてのこのこ新宿まで出てきたのだ。

だから、顔はおろか背格好も、年のころも、性別すらわからない。電話番号だけが頼みの綱だ。アニソンが歌いたいなんて言っていたぐらいだから男でオタクだろうとは思う。チャットの感じでは自分よりは若そうだ。昔2chオフで会ったオタクたちはデブが多かったな、と思い返す。

1分前。かかった。

かかったが、眼前で電話を取った者はいない。

「あ、もしもし?増田ですけど今交番の前で」

「あーごめんなさいまだ着いていません今改札出たところで!」

「わかりました。待ってます」

驚いた。若い女性の声だ。

5分もすると電話がかかってきた。

「今交番の前にいます!えーと格好が黒の上下でミニスカの」

太一郎は目を合わせながら携帯を振ってみせた。

「もう一件電話がかかってきたんで、もう一人来ているかもしれないんです。かけなおしてみますね」

かかったのは太一郎携帯だった。

「僕一人みたいですね」

「じゃあ、行きましょうか」

挑発的な格好の美人が来るというのは、想定の範囲外だったな。

彼女の後について歩きだしながら、そんなことを考えていた。

(つづく)

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