2022-02-17

8年勤めたNTT退職しました

わたくしごとですが、8年勤めたNTTを退職しました。多少のフェイクをいれますが、概ね働いていた当時感じたことを率直に残したいと思います。

賃下げ問題について文春砲が炸裂していますが、持ち株や経営層が途方も無いアホさを露呈してくれているので、ただの一個人の退職記録ですがそういうアホたちに少しでも刺さればいいなと思って書き残します。

NTTのどこを辞めた?

はてなのみんなが鬼舞辻無惨ぐらい憎んでいるSIerで働いていました。

ロールとしてはいわゆるプロジェクトマネージャーというやつで、一番嫌われる役どころでした。他にも、出向に近い形で他のNTTグループ会社に支援で入ることもありましたが、その際はITコンサルタントだったりプロジェクトマネージャーだったり色んなロールで支援していました。

なぜ辞めた?どこに転職した?

個人的な退職動機としては、知人からいいお誘いをいただいたからという点につきます。ちなみに知人も同じグループで働いていた人です。

転職先は米国のクソデカIT企業です。

もとの会社においても、一般的なSIerと比較すると悪くない給料を貰っていたと思います。それでも辞める決断をしたのは、以下の理由があります。

  • その会社で経験すべき重要なことを一通り経験して、違うタイプのロールの経験も積みたくなった
  • 将来的なキャリアパスがかなり明確になってしまい、その道を突き進むことを決断できなかった
  • 出世競争も政治競争の側面が強く、モチベーションを持てなかった
  • 人権侵害に等しい作業端末
  • 倍近い年俸を提示してもらえた

まあ実際は一番最後の理由に尽きます。違う国の会社、というだけで同じような仕事・職責でも倍ぐらいお金を貰えるというのは衝撃的でした。

NTTの良かったところ

自分がいた会社しか知らないのでそこを中心に書きます。

優秀な社員が多い

僕がいた会社では主なキャリアパスがプロジェクトマネージャーということもあり、プロジェクトを前に進める上で重要なスキルを備えた人が非常に多くいました。某掲示板などでは丸投げ屋だと揶揄する向きもかなりありますが、プロジェクトマネジメント自体はかなりの特殊スキルであると同時に汎用的なビジネススキルもかなりの練度で身につくタイプのロールでした。

チームで業務を行う仕事(=世の中のほとんどすべての知的労働)に応用のきく、基本的なビジネススキルを鍛え上げることのできる会社でした。

  • 適切にステークホルダーにホウレンソウを行える
  • スケジュール計画・管理ができる
  • あらゆる業務の品質・進捗管理ができる
  • 課題の洗い出し・掘り下げができる
  • 業務の適切な見積もりができる
  • 適切なリスク管理ができる

など、どんなビジネスの現場においても役に立つスキルをその辺の一般社員が当たり前に備えているのは、非常に良い環境だったと思います。誰かと協働することが非常に楽にできる職場でした。社会人として当たり前だろ、というように思う方もいるかも知れないですが、意外と上記を一通り高いレベルで当たり前にできる人というのは稀有な存在だと思います。

もちろんこれだけではなく、技術領域においてもそれなりの専門分野を持っていないとPMはできないのですが、それを抜きにしても上記をみんなが当たり前に備えた環境というのは素晴らしかったと思います。

仕事の裁量がクソでかい

僕は素晴らしい上司にめぐまれたこともあり、幸いにも若いうちからかなりいろいろな経験をさせていただくことができました。

入社後3年目ぐらいで数億円規模かつ20名程度のマネジメントを含むプロジェクトマネージャー業務など、若いうちから非常に大きな裁量を持った仕事を振られるのはあの会社ならではのことだったと思います。

当然協力会社さんのほうが年齢も上で経験豊富なベテランのメンバーなどを相手にリーダーとして働かないといけないのですが、そういった環境で周りの色々な知恵やスキルを吸収できること・経験できることは非常に良かったと思います。

お互い真剣に仕事をしているので、時にはそういったベテランと大喧嘩することなどもありましたが、未だに一緒に飲みに行くぐらいには強い信頼関係を築くこともできました。

なお、初年度などはいわゆるエクセルスクショ試験(笑)の担当などの下積みもしっかりやりましたが、あれは無駄に思える一方で、「誰でもできる簡単な仕事」をこなしつつ現場の業務プロセスを覚える、という点では案外悪くない仕組みかなとも思えました。難度の高い仕事をしていたら目の前のことでいっぱいいっぱいになってしまって、周囲を見ながら仕事をすることは難しいので。

成長環境

上で書いたような業務面での成長環境はもちろん、制度面でも成長を支援する仕組みは整っていました。

手を挙げれば海外案件に挑戦できるなど。日本のSIerでは珍しいと思いますが、数年単位の海外赴任をしている人も結構いました。(オフショア先とかではなく)

また、社内・グループ内の公募制度があり、行きたい部署にいきなり手を上げて異動することなどもできました。自分の伸ばしたいスキルや経験したい業務に応じて環境を変えられる制度が整っていたのは非常に良かった点でした。

いま入社を迷っている若い人がいたら、自信を持っておすすめできます。

待遇は悪くない

それなりに出るボーナスや家賃補助など、通り一遍あるとうれしいな、というような福利厚生などは整っていたかと思います。同年代同業種と比較して、それなりにもらえているので待遇面の不満はそんなにありませんでした。ただ、部署や周りの人間にもよりますがめちゃくちゃ飲み会に行くのでお金は常にありませんでした。まあ好きで行ってたので不満ではないです。

NTTの悪かったところ

グループや経営層の方針に振り回される

特にグループ関連の仕事をする際には、持ち株の意向や経営層の意向を無理やり汲み取るのを要求されることが多々あります。「○○さん案件」のように、個人名のついた特命案件が走ることもありましたが、概ねただのおじいちゃんの思いつきなので不毛かつ無茶な仕事になりがちでした。

損切りできない

大失敗した事業の損切をできないのは皆さんご存知のNTTの悪癖ですね。

誰も喜ばない、儲かってもいない事業に延々従事させられる社員は成長のチャンスもなければ評価を受けることもないので、文字通り飼い殺し状態になります。配属されてしまったら、個人としては不幸しかないのでさっさと転職するべきですね。

経営者が素人

いわゆるサラリーマン経営者ばっかりなので、経営という超特殊スキルが必要な業務を高齢者が無免許運転している状況です。

これだけ大きなグループ企業をコントロールするのは専門家でも困難な仕事だと思いますが、なんとか成り立っているように見えるのは本当に現場の管理職・社員が必死で支えているからにほかなりません。そんなわけで、定期的に降ってくる経営方針や社内へのメッセージなどには疑問しかなく、常に会社の先行きに不安を覚えながら暮らしていました。

また、人売り商売のくせに人の値付けが致命的に下手というのもウケますね。何十年も同じ単価でやってたり、お客さん側からのコスト圧で単価下げたり当たり前にやってましたが、これだけIT技術者が確保できない・付加価値の上がっている時代に単価を下げてまでやる仕事なんてないと思いますけどね。転職して名刺が変わっただけで、同じ人間が2倍も3倍も違う単価で売られている状況に疑問とか持たないのかなと。

やってるフリだけのハラスメント対策

管理職のハラスメントが横行していましたが、自浄作用はあまりなかったと記憶しています。社内通報制度などもあるんですが、偉い人が当事者の場合はなぜか多様な忖度が働いて通報者が不利益を被った、というような話もたくさん聞きました。そんなわけで、社内通報制度は自分も死ぬ代わりに加害者にもなんとか一矢報いて泥をかけるための神風特攻型の制度でした。

賃下げ報道を受けて

いますでに多くの優秀な社員がバンバン転職しているなかで、この賃下げは文字通り自殺行為だと思います。

転職エージェントの知り合いなどから実際によく聞く話ですが、僕のもといた会社の人員の転職市場における価値は非常に高いです。ちょっと手を上げるだけで1.5倍ぐらいの年収を提示してくれる会社がごろごろある状況です。

そんな状況下で賃下げのメッセージは非常に強く、仮にどれだけ「優秀な社員は賃下げされない仕組み」だと説明しても「賃下げをするような会社には居たくない」、というのが人間心理だと思います。いま会社が生き残るために必要なのは、賃上げです。(回線屋のほうは知らないですが、SIerのほうは。)

優秀な人間がどんどん外資に吸い取られていくなかでそんなメッセージを受け取ってしまったら、強烈に転職の動きが加速するかと思います。転職エージェントたちがめちゃくちゃ準備運動してるころじゃないですかね。

実際、転職に二の足を踏んでいる人は「外で通用するかわからない」みたいな理由でとどまっている人も結構いたんですが、外に転職する人間が増えてその幻想もかなり壊されてきている状況です。

持ち株・経営層はすぐさま撤回して強烈なメッセージを発信しないと大変なことになると思います。あなたたちが人材獲得競争をしているのは日本のSIerじゃなくて世界のIT大手なんです。

新しい職場はどうか?

転職先については、能力面でも人間性の面でも非常にできた人が多く、毎日楽しく仕事しています。国籍・経歴などさまざまな点で多様な人がいるので、そういった点もおもしろいです。

あとは会社のカルチャーが出来上がっていて(重要な点は明文化もされていて)、それが通底されているのが素晴らしいですね。この会社で働くことに非常に納得感・意義を感じることができます。また、ハラスメント対策などの人権意識も非常に高いです。セクハラ・パワハラはどんなに偉くても一発退場なので安心して業務に取り組めます。

経営層もとんでもないスーパーマンかつ経営の専門家ばかりで、経営方針や成果の説明などは非常に納得感をもって受け止めることができます。コロナ対応などでは物凄い速度で社内制度や仕組みが整備されて、あっというまにフルリモート体制になりました。

待遇もめちゃくちゃ良くて、給料はもちろんですが福利厚生などもNTT時代より優れたものが多々あります。

おわりに

新しい職場にまったく不満を感じていることはないですが、前いたNTTも総じて良い会社でした。現職と同じだけの給料を提示してもらえるなら戻りたいと思えるぐらいにはいい会社だったと思います。人もよく、やりがいもあり、成長もできる素晴らしい会社でした。

そういうわけで、それなりに愛社精神みたいなものもあったんですが、今回の賃下げ報道には失望しかありません。僕の大好きな元同僚たちがさっさと逃げ出してそれぞれ幸せを掴んで欲しいなと思います。

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