部屋の片隅、机の脇から、地元テレビ局のロゴが入った紙袋が出て来た。
長らく忘れていた、消したい思い出が瞬時に蘇った。
中身はタオル。謝礼として贈られたものだ。
手渡しで貰った日から今まで、使うこともなく放置していたのは、死人に鞭打つような最悪なことをしでかしたからだ。
あの日の私は紛れもなく、相当に頭の狂った馬鹿だった。
5年前、中学時代の友人が亡くなった。事故ではない、病死でもない、自殺なんて選ぶヤツではない。
その報せを、私は顔も知らない女の声で知った。買い物をしている時だったかな。
女はテレビ局の人間で、部活の後輩の携帯電話から掛けてきていた。
泣き喚く私に女は、友人の写真を持ってないかと聞いてきた。
友人とは、学校では話したが一緒に遊びに行くような仲ではなかったので、写真はないと伝えたが、相手は食い下がる。
卒業アルバムでもいいから、彼が写っていれば何でもいいから。
ここで是が非でも断れば良かったのに、了承してしまった。
帰宅して両親に大反対されたのに、渡してしまった。
数日後、卒業アルバムと一緒に、例の紙袋が手渡された。
その時にはもう頭が冷えていて、どうしようもなく愚かなことをした自分が情けなくてしょうがなかった。
もう5年も経つから許してと、紙袋に入れられていた箱の封を切った。
中から出てきたタオルはとても柔らかかった。何故だか分からないけど、それが逆に辛かった。
何かの景品で貰ったと偽り、タオルを母に渡す。母の笑顔に苦しくなる。
私の部屋からタオルは消えたけれど、この先10年経っても20年経っても、この罪悪感は消えなくて、
私は友人に二度と許されないんだろうな、と思う。
ちなみに、友人を刺し殺した馬鹿は今でも捕まっていない。
もう捕まることがないのなら、地べた這いずり回って苦しみぬいてから野垂れ死ね、と強く願っている。
天国の彼は「いい写真選んでくれてありがとね」って言ってくれてるかもしれない 分からないよ