90年以前は、インターネットが普及しておらず個人の触れうる情報の絶対量が少なかった。そこに来て、TV、CD、レコードなど庶民が手に届く情報源へメッセージをこめた歌詞を送ることは強い意味があった。その発行元も限定されており、「自分のこの思いを歌詞にこめて伝える」ことも世間から見れば新しいものだし、珍しいものだった。
いまではむしろ情報過多な世間であり、歌詞における目新しいメッセージなんて皆無といっても過言ではない。良く言われる「既存パターンの新たな組み合わせ」を模索するしかできなくなっている。
自分で作り出さねば存在し得なかったメッセージが、今では探せばどこかに落ちている。ミュージシャンの立場としても抜きん出にくい世の中になったといえる。そして、2番煎じはどうしてもオリジナルに見劣りしてしまうのである。最近のカヴァーブームも、そういった音楽業界の喘ぎの1つのように感じる。