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僕はあの人がとても優しいことを知っている。とても丁寧なことを知っている。でも時々いい加減なことも知っている。いらいらしているときは小声になって、笑い声だけ大きくて、そして何度も何度も笑うし、もうどうしたらいいんだって顔をする。あなたは怒っているときの方が笑う。怒ってないときは淡々と抑揚なくしゃべる。知っている。唇の端でちょっとだけ笑って、あとは無表情で、時々大きな声になる。そういう時は機嫌がいいって、僕は知っている。その瞳の中に柔らかい光があることを知っている。誰かを思いやり傷つけないように言葉を選ぶ優しさと、親しい人はいじめまくる甘え方と、でもきっちりと線は引いて気をつけている慎重さと。そういうものを知っている。そういうところがすごくいいと思う。
好きだと言う気持ちを手放すのはつらい。そこにあなたがいたからがんばれたことはたくさんある。それはいつだってそうだったし、これからもきっとそうだろう。
誰かと親しくなりたいと言う欲求。あなたと話したいと言う願望。あなたを傷つけたくないという祈り。失うことのできない世界。忘れられていく世界。僕の中にある、美しさへの希求。あなたが持つ、やわらかな光。春の光のような、穏やかな秋の夕暮れのような、静けさと、あたたかさ。失いたくない。だというのに、あなたを傷つける未来しか思い浮かべられない。僕はきっとあなたからその優しさを奪うだろう。うんざりとした顔にさせて、とげのある言葉を語らせ、穏やかで淡々と続く、ひどく整然とした世界をかき混ぜて台無しにしてしまうだろう。奪うことしかできない。傷つけることしかできない。それでも、そうとわかっていてもそのあたたかな腕に触れたい。
気持ち悪い。
勝負だったのか。 あなたは負けたかったのに、 俺がさっさと試合を投げるからキレて破壊活動を始めたんだな。
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