留学中、ノイローゼになっちゃって、せっかくの海外なのに、
図書館にこもって日本文学を片端から読んでいた。
そのとき、このひとの作品だけは他の誰にも書けないだろう、
と唯一思ったのは、井上ひさしさんでした。
『井上ひさし全芝居』。本当になつかしい。
毎日毎日がつらかった時期に、腹の底から大笑いして、
これが読める日本人でいて幸せだと確かに感じたことが、
どれだけ私にとって救いになったか。
「むずかしいことをやさしく、やさしいことをふかく、
ふかいことをゆかいに、ゆかいなことをまじめに書くこと」
あなたがやろうとしたことが、どれだけ大事で、どれだけ困難か、
私も原稿書きを生業とするようになり、十年前よりは少しわかるかもしれません。
井上さん、私は、深く、深く感謝しております。
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