2010-04-09

赤ずきんちゃん

あるところに赤ずきんちゃんがいました。

赤ずきんちゃんはいつも赤いずきんをかぶっていました。

親友エリーと一緒に町へお買い物に行く時も、もちろん赤いずきんでした。

今日かわいいお洋服いっぱい買えたね。」

エリーは色が白くて、誰からも好かれる優しい女の子です。

赤ずきんちゃんはエリーと遊ぶ時間をかけがえのないものだと感じていました。

今日は赤いずきんにお花の刺繍が入ってるのね。いいなー。」

「でしょ!? ママがつけてくれたんだ。」

「ちょっと喉が渇いたね。あそこのカフェで休憩しましょ。」

「そうね。」

二人は町の広場が見えるカフェで一息つくことにしました。

エリーアイスティーを頼みましたが、赤ずきんちゃんはメニューとにらめっこをしながらなかなか決められません。

「私さぁ、ケーキ頼んでもいいかなー。」

「いいよ。私のことは気にしないで。」

「ここのお店、アップルパイおすすめらしいんだけど。」

リンゴ? うーん、リンゴはちょっとねえ……。」

「そっかー。じゃあ、チーズケーキひとつ!」

運ばれてきたチーズケーキに目を輝かせながら、赤ずきんちゃんはフォークケーキの端っこを切ってそっと口へ運びます。口の中にじわっと甘さが広がりました。

「あまーい! おいしー!」

エリーは、おいしそうにケーキを食べる赤ずきんちゃんの様子をじっと見ながら、小さなためいきをつきました。

「どうしたの? エリー。本当にエリーは食べなくてよかったの?」

「うん。ちょっと今ダイエットしてるから。」

赤ずきんちゃんはエリーから思わぬ言葉が飛び出して驚きました。

「どうして? エリースタイルいいじゃない。」

「でもね、太ったのよ。体重キロも増えちゃった。」

「全然わかんないよー。」

「んー……。でも、この間彼もね。私の脇腹つまんで、ちょっと肉ついてきたねって言ったのよ。」

「何それ。あの彼氏、全然そんな風に見えないけど、結構ひどいんだね。」

「天然なのよ。」

結婚、考え直しちゃう?」

エリー左手の薬指に光る婚約指輪を眺めて赤ずきんちゃんは言いました。

「まさか! 彼、ああ見えてもいざって言うときは頼りになるんだから。」

「うらやましいことですなー。」

とてもおいしいチーズケーキだったので、赤ずきんちゃんはおかあさんにも食べてもらおうと、お土産に買って帰ることにしました。

「あー。私もはやく素敵な王子様にベッドの上でキスされたいなー。」

何度もエリーに聞かされた彼との馴れ初めを思い出して、ついつい、はしたない願望を口に出してしまう赤ずきんちゃんなのでした。

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