2010-03-20

http://anond.hatelabo.jp/20100320035305

「来て、くれたんだね」

さっきイオン結合を解消したばかりの二人。一切の有機物が存在しない無機質な溶媒の中で、しかし今、しあんさんの目に映るのはあんもにあだけだった。

「もっと早く来てくれると、思ってた」

「ごめん」

優しい目でしあんさんを見やったあんもにあは、がさごそと外殻を震わせる。

電子対…… 共有できるかな

心なしか頬や額を赤く染めたしあんさんが答える。

「うん、大丈夫だと思う」

気だるげに上半身をもちあげ、電子対を受け取るしあんさん。その肩に、そっと腕を伸ばすあんもにあ。

「けっこう励起してないか?」

あんもにあの問いに、殻をにらみながらしあんさんが答える。

「励起してるかも……。周りの水も電離したのが多くなってるし……」

水素、いいかな……」

控えめな声とともに、しあんさん窒素に近づくあんもにあ。

「あんもにあ、近いよ……」

あんもにあは、そのまま自分水素をくっつける。

「あついね」

「こっちはよくわかんないよ……」

ふたりの影はひとつひとつに溶け合い、そして明かりもほのかになっていくのであった。

記事への反応 -
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