まぁまぁ、読んでから考える事にしないか?
〜T/H
(すまん一部無断借用、掲載↓すやまたけし『素顔同盟』より。)
「……つまり、市民が仮面をつけだしたことによって、人と人との摩擦はすっかりなくなり、平穏な毎日を送れるようになった……。」
先生は教壇の上で仮面に笑顔を浮かべ、熱弁をふるっている。確かに、怒った顔で授業をするより、このほうがいいのかもしれない。だが、いつも同じ笑顔の先生にもの足りなさを感じるのも事実だ。
「……この便利さを、一度手にしてからは、元に戻るわけにはいかなくなった。やがて、この仮面は法令化され、制度として確立されるようになった……。」
ぼくは隣の友人の顔を見た。必死にノートをとっている彼の顔も笑顔だった。それと同じ笑顔が四十個(ぼくの笑顔も含めて)先生に向けられているのを、先生が同じ笑顔で受け止めている。どうもこっけいに思えるのだが、隣の友人は奇妙に思うことはないらしく、静かにノートに鉛筆を走らせている。
「……きみたちも現在、義務として仮面を着用しているわけだが、不便を感じたことがあっただろうか。考えてもみなさい。もし、きみたちが仮面をはずし、喜怒哀楽をそのまま表したりしたら……。この世は大混乱に陥るだろう。人は憎しみ合い、ののしり合い、争いが絶えなくなるだろう。いつもニコニコ、平和な世界、笑顔を絶やさず、明るい社会。
ぼくは友人にきいてみた。
「先生の今の話、おかしいと思わない?」
「なぜ? 笑顔のおかげで、ぼくたちはけんかをしないですんでいるんだろ。」
彼は笑顔で答えた。その仮面は実ににこやかに見えた。しかし、本当に仮面の下でもそう思っているのだろうか。ぼくだけが変な考えにとりつかれているのだろうか。
「……仮面をはずすという反社会的な行為が、人々に不安と恐れを与えるのは当然だ。そのような者を排除して、健全な社会を保とうとするのは……。」
「しかし、みんなの仮面の下に隠しているのが本当のぼくたちの姿じゃないのかな。」
「おい、そこ。さっきから、うるさいぞ。静かに!」と先生は笑顔でぼくに言った。
だから学校教育法の前文に照らし教科書を君が言うような趣旨で解釈するのは困難である。百歩譲って君が言うような趣旨があるとすると、それはその教科書で教育をする教師の内心に...