法律の話と契約の話があるんだけど、元ブログもこの点では混乱が見られるな。
とあるので、そもそもこの人は「義務を果たしていなくても権利を行使して良い」
つまり「給料や職位に見合った仕事をしていなくても高い待遇を得る権利はある(だって労働法や就業規則にそんなの書いてないから)」
と思っているようだけど。
これについては「そんな訳無いだろ常識的に考えて」としか。
まず、適切な労働時間とか有休、育休を保証すること、は「法律」によって「雇用者」に課せられた義務な。「被雇用者」から見たら権利になる。これは正当な雇用契約を結んでる限り、保証される権利だ。
「義務と権利」がセット、というのを「義務を果さなければ権利を使えない」と誤解する人が多いけど、セットになってる「義務と権利」っていうのは、「自分から見た義務が相手から見た権利である (あるいはその逆)」っていうことだからな。give and takeという話じゃない。
一方で、「給料や職位に見合った仕事をする」というのは雇用契約の問題になる。こちらはgive and takeの問題だ。契約によって、被雇用者は何をすべきか、そして雇用者はその見返りに何を提供するべきか、ということが定められる。「義務と権利」はここで2セットある。つまり、(A)「被雇用者が約束の仕事をするという義務 : 雇用者が約束の仕事をしてもらう権利」と、(B)「雇用者が約束の待遇を提供するという義務 : 被雇用者が約束の待遇を得るという権利」だ。それぞれの中では対になっているけど、AとBを結びつけてるのは法律ではなく、雇用契約。
で、「給料や職位に見合った仕事をしていない」というのは、被雇用者が(A)の義務を果していない、ということ。この場合、雇用者は(A)と(B)を結びつけている契約を再考することができる(ように契約は作られてる。普通は。) 一般には雇用者の方が立場が強いので、法律は(B)についていろいろ制限をつけていて、簡単に「(A)が履行されないので(B)をチャラにします」というわけにはいかないんだけれど、それでももともと(A)と(B)のgive and takeを前提に契約を結んでるわけだから、前提が成り立たなかったら法律の範囲内で(B)を考え直しましょうや、ということになるだろう。それは契約、くだいていえば約束の話だ。
被雇用者の立場をまとめると、「法律に定められた範囲の権利は、雇用関係があるかぎり主張できるよ。でも『働きます』って約束を破ったなら、雇用関係自体が見直されるかもね」ということ。