少し長いエスカレータに乗っていた
しばらくして、後ろからドン、とぶつかられた
ぶつかったというか、何やら批判的に横に下げていた鞄を叩かれたような衝撃だったので、
思わず振り返ったら、おじいさんがいた
おじいさんは、「すみませんねぇ」と言いながら、私の隣を歩いて上がっていった
おじいさんに謝られた事で、前の人がちらちらと私を振り返る
内心、ムっとした
口が裂けてもスレンダー美人とは言わないが、ちゃんと端に立っている
それにもう何人も私の隣を普通に歩いて上がっていったけど、誰一人ぶつかるどころか、荷物にかすりもしなかった
危ないじゃない
色々言われたりかかれたりしてるじゃん
そこまで一気に考えた時、少し上でまた「すみません」と聞こえた
さっきのおじいさんがまた他の人にぶつかったみたいだ
顔を上げてそれを見ていて、やっと気づいた
脚が不自由という訳ではなさそうだけど、おじいさんは身体を大きく片側に振らないと、階段を上がれないようだった
大きく左右に揺れながらもエスカレーターを上がり終えたおじいさんの背中を見ていて
急に恥ずかしくなった
たしかにエスカレーターは「歩くな」だろう
したがって、自分に非はないだろう
でも、そんな杓子定規に考えるべきことだろうか?
あんな一生懸命になって急がなければいけない理由が
おじいさんにはあったかもしれないんだ
それも、自分自身を納得させるための
たとえそれが正義であっても、
あれこれ頭の中で考えた自分自身が
ものすごく人として下らない人間に思えた
杓子定規な正しさを主張するよりも、もう少し人に優しい人間になりたいな、と
ちょっと反省した