2009-10-27

タクシーに乗った

10月26日。週の頭からうんざりするほどの雨であった。

とある趣味に使う材料の加工を専門の業者に依頼するために駅を降りたのだが、土地勘もなく材料も重い。

プリントアウトして手帳にはさんだつもりでいた地図は、広げてみればカラオケボックスの割引チラシだった。

その事実に憮然としながら私は、さてどうしたものか、と改札を出た屋根の下で少しばかり考えてみた。

加工依頼をした後に別件の約束時間が迫っており、あまり時間無駄にはできない。

駅にありがちな、裏側に蛍光管が取り付けられた発光する周辺地図を探すと、

それはたやすく見つかった。が、あろうことか改札の内側に設置されているではないか。

ちょっと待ってくれ。なぜそれを内側に置くんだ。浅草橋

自宅にて、プリントアウトする前に画面で確認した目的地は、駅からおよそ500メートル

あるいは店名を尋ねればタクシーの運転手が知っているのではないかと、

屋根を出て、初乗り710円の高額移動体を停めてみたものの

「ちょっとわからないですねえ」

とつれないお返事。この界隈は規模でいうと零細~中小の問屋専門店が軒を連ねているのだ。

あたりまえだが彼らは、道のプロであっても町のプロではない。

結局、控えていた店の電話番号に連絡をして住所を尋ね、

それをもとにタクシーのナビで無事到着することができた。

驚いたことに支払いの際、710円の料金に対して1010円を出そうとしたところ、

「700円でいいですよぉ!」

などと気前のいいことを言われてしまった。

短い乗車時間ではあったのだけど、ナビの性能に純粋に感動してベタ褒めしたり、

焼き鳥屋で出てくる銀杏の話で小さく盛り上がった効果もあったのだろうが、

まさかディスカウントしてくれる運転手がいるなんて。

無論額面通り支払って車を降りたのだが、なんというかさすが首都

ああいうリラックスした雰囲気で移動できたら710円もアリである。

余談だが、カーナビ電話番号を入力すればそこから住所が検索できるのだ、ということにはあとで気づいた。

さて、加工依頼も終えて、その後の約束でしこたま酒を飲んで

足元がヘロヘロになりながら地元の駅を降りれば時刻はすでに0時すぎ。終バスは10分前に出発していた。

1日に2度もタクシーに乗るなんて生まれて初めてである。芸能人か。

酒をどれだけ飲んでも、言動に淀みがないことに定評のある私であるので、

バスに乗り損ねたおろかもの目当てに列をなすタクシーの先頭をとらえて淀みなく目的地を告げた。

「○○トンネルの先のコンビニの前で停めてください」

このトンネル、わが町にある車両で通ったことはないほどの主だったトンネルで、

その先のコンビニにしても知らない人間は皆無である。

そんな目的地を、いささか厭そうに訊き返されたのだ。

自分の舌に不安を覚えるも、一瞬前の発言を思い返してもおかしい箇所はない。

再度同じ目的地を告げると、運転手はドアを閉めて走り出した。

目的地に到着して、メーターを見ると昼間と同じ額面の710円。

人のよさそうな昼間の運転手の笑顔が浮かんで、少し幸せな気持ちになりながら

昼間と同じ1010円を支払うと、硬貨3枚のつり銭を渡された。

降りて何の気なしに街路の明かりでつり銭を確認すると、手のひらに乗っているのは210円だった。

なんだこれは。

深夜割増とはいえワンメーター客が億劫なのはわかるし、

足元はふらついている酔っ払いだというのもマイナスポイントかもしれない。

だが、なんなんだこれは。あまりにも卑小すぎる。

これがサービス業なのか?

たった90円を酔った客から掠め取るような程度の低い仕事なのか?

いうまでもないことだが、地元タクシー運転手すべてがそういった屑だということではない。

だが、会社看板を背負って、たった90円を騙し取るなんて正気の沙汰とは思えない。

運転手の名前も、ナンバーも確認はできなかったが、少なくとも私はもう二度とここでタクシーを使うことはない。

トンネルゲロを撒き散らしながらでも歩いて帰るだろう。

神奈川僻地たる逗子タクシー。どうなってるんだ。

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