なんとかしなくてはならないのは、わたしの方だとはわかっているけど、年下の彼より遅くしか動けないのに、年をとったのだなと痛感してしまう。
今朝のメールは怒っていた。
きっと昨夜のメールのせいだ。
わたしは午前零時までは一滴も飲まないのだけれど、それ以降は飲む。
それは彼にも伝えていたはずだし、なるべく控えるようになってきているのに。
「あなたはもっときれいな人だと思っていました」
端的にそう言われる。
そう誤解されるより、あなたに好かれたくてきれいになっていくわたしを見てほしい。
わたしがきれいになっていくのはあなたのせいなんだから。
これでもだいぶマシになってきたんだから。
彼が不安定になっている原因はわかっている。
ついこの間、昔の男の話をしてしまったから。
あなたがわたしを女として見るようになって、わたしが頑なに拒むのに、なぜぼくを男として見てくれないんだと、問い詰められてしまったから。
あなたをそんなに粗末に扱う気はない。
そう伝えてもわかってくれない。
だから話しちゃったんだ。身体から始まった昔の男のこと。
一瞬の好奇心を満たすことが、関係をずたずたに引き裂いていくこと。
もう、その男とは完全に切れているし、たしかもうすぐ結婚するはず。
もし、よりを戻したいだなんて言われても、拒絶すると思う。
どうせ、わたしの身体が目的なんでしょ? って。
でも、そんなことはどうでもよくて、わたしが彼に伝えなければいけないのは、関係とはそういうものではないと、わたしが思っていること。
メールの距離。
電話の距離。
カフェで向かい合う距離。
手をつなぐ距離。
隣に座る距離。
ぎゅっと抱きしめる距離。
キスする距離。
そのどのあなたとの距離も、全部大切な距離だってこと。
なにひとつとして、大切でない距離はないってこと。
ひとつひとつの距離で、お互いつながっているのだと、そう想い合える関係を、築いていきたいってこと。
わたし、はじめてなんだ。
わたし、はじめてなんだ。
はじめての電話を待つときに、あんなにドキドキしたの。
はじめて会ったとき、はじめて向き合ったとき、手をつないだとき、はじめて隣に座ったとき。
その全部が大切。
抱かれるのを拒むだけで、嫌われるのを恐れる関係は、もう絶対にいやなんだって。
あなたが数ヶ月も海外出張をして、電話も、メールも送れなくなっても、つながっているんだって思える関係になりたいって。
そう伝えたい。
だから、それを作るながいながい時間をわたしにくださいって、そう言えばいいのかな?
一秒も無駄にしたりしないからって。
想いを作っていく時間をくださいって。
いくつもの距離にお互いの想いを通して確かにするための時間をくださいって。
昨日、歯医者の待合室で、小さな女の子が踊っていて、笑ってしまった。
あんぱんまんの音楽を歌いながら跳ね飛んでいた。
母親が治療中で、それでおもちゃの銃みたいなのを持って、こっそり診療室の方へ忍び込もうとする。
本人はおそらくスパイ気分。
カウンターには事務のお姉さんもいたのだけど、静観していたからそう言う方針なんだろうって、ずっと待合室でテレビを見てた。
それで、その女の子の記憶にはどんな楽しい思い出として残るのだろうって、想像してみた。
母親が戻ってきて、恥ずかしそうに子供をしかるのだけど、それでさえ大切な時間なんだって、思えた。
大変だろうなと思うのだけど、でも、それはまだまだずっと先のことで、その前にとてもたくさんの大切な時間を過ごさないといけないんだって、とてもたくさん作らなければならないことがあって、あなたにはそれが見えていなくて不安になる。
とてもたくさん想いを通わせ合って、壊れてしまわない関係を作らなければならないんだって思うんだ。
メールの距離も、電話の距離も、カフェの距離も、手をつなぐ距離も、抱きしめられる距離も、どの距離も全部寸断されてしまってもつながっているような。
そんな関係にあなたとなりたい。
身体をつなぐのは、できればその一番最後にしたい。
わがままかな。