その中に、拳(何も武器や盾を装備していない状態)でオールクリアする、という制限を自らに課してゲームを進める、というものがあった。いわゆる「制限プレイ」とか「縛りプレイ」といったものだ。これによって主人公が敵を攻撃する手段は「殴る」のみである。そのゲームでは、「殴る」攻撃は出だしが速いが威力が非常に低いという設定なので、プレイ経験のある者ならばクリアの難しさは容易に想像出来た。
しかし自らそんな制限を課すほどの自信は伊達ではなく、視聴者達をハラハラさせながらも順調にゲームは進行していくのだが、とあるステージで難問にぶち当たった。
そのステージのボスは、いわゆる空飛ぶ怪物なのだ。各種存在する遠距離攻撃を駆使すればさほど攻略に手間取らない相手なのだが、武器を持てない状況では手も足も出ない。どうやら実況者は素でこのボスの存在を忘れていたらしく、このボスのみ例外という事で妥協するか、もしくは制限プレイをここで終了させるか、どちらかを選ばなければならない状況に陥ってしまった。
そしていよいよボスの登場である。すると実況者が操る主人公はおもむろに手に魔法を使うためのアイテムを装備した(このゲームでは専用のアイテムを装備しないと魔法を使えない)。
そして、青白い光を敵に飛ばす初歩的な魔法攻撃を空中のボスに向かって繰り出し始めたのだが、その瞬間我々視聴者は思わず笑ってしまった。魔法が飛ぶ瞬間、どこかで聞き覚えのある「ハドーケン!」という音声が聞こえてきたのだ。
そう、実況者は動画を編集する際、魔法を使う瞬間にストリートファイターIIの「波動拳」のSEを重ねていたのだ。なるほどそれも「拳」には違いない。見た目も何となく似ている(気がする)。制限は破られていない。流れていくコメントも沸いた。それからしばらくして、実況者はめでたくラスボスを倒し制限プレイを達成してみせたのだった。