年の(下の方に)離れた妹達が、祖父とテレビを見ながら楽しげに話していた。それが小遣い目当てなのは我々には(おそらく祖父からも)見え見えだが、若い孫娘の「両手に華」状態に祖父もまんざらでもないので、周囲もあまり強く言わないのが暗黙の了解となっている。
テレビには若手芸人やタレントなどがやたら数多く出ているバラエティ番組が映っており、しきりに妹達は祖父に画面の中の連中の名前を教えている。
最初はほうほうと頷きながら聞いていた祖父だったが、ついに禁断の言葉を発してしまった。
「そんで、この○○○ってのは何が上手くてテレビに出してもらえるようになったんだ?」
ほんの数秒だが、祖父と妹達、それを後ろで見ている俺、両親、そしてテレビの中のトークまでもが一瞬凍り付いた。
「えーと、特に何か特技があるってわけじゃないんだけど…」
年下の妹の方がやっとの思いで答えを絞り出した。祖父はすぐに切り返した。
「なんだこいつら取り柄は何もねえのか。それならお前達の方がよっぽど見栄えがええわい。どうじゃお前達、テレビに出てみるかえ?」
言い忘れたが祖父はその業界では超大手な某メーカーの会長だか顧問だかをかつて務めていた人だったりする。俺がガキの頃、なんかテレビで見たことがある政治家とかが菓子折持って挨拶に来る事もちょくちょくあったような人だ。そのためこの祖父の言葉は半分しか冗談に聞こえなかった。唐突にスケールのでかい話に引っ張り出され狼狽している二人を見かねた父が助け船を出す。
「ありゃあ何の取り柄もないからテレビにでも出るしかねえんだよ。勉強も部活も頑張ってるお前らにそんな暇はねえもんなあ?そうだろ?」
当然だが、後半は純度100%混じりけなしの皮肉である。普段の彼女らの「やんちゃ」ぶりをある程度知っている俺は思わずニヤリ。すると祖父は俺の方へと振り返りこう言った。
「ほっほっ、サラリーマンなんぞよりよっぽどテレビ屋に向いてそうなのがここにおったわえ。」
父と母がむせるほどに爆笑した。
夢みたいな家庭だね。 学も知識も知恵もない労働者の父親つったら、手元に新聞広げてニュース番組梯子して威厳取り繕い、そのうち他の家族は綺麗さっぱり離れてネットの海でスキマ...