会社の同期同士で上司夫婦のホームパーティに行った。
企画したのはひとりの女の子だった。
夫婦ふたりとも同じ会社の社員。
娘がふたりいて、その日は娘さんの誕生日祝いを兼ねていた。
会社では同僚としてふるまうふたりも、家では夫婦であり父と母だった。
子供は父親である上司に抱きついていた。
「お父さん重たいでしょ。やめなさい」と上司女性が言ったら
「いつもは信二くんっていうんだよ」と子供が言った。
子供の目にも男と女として両親が写るのだなあと思った。
パーティを企画した女の子が
「男の人は自分のお腹から子供が生まれてくるわけではないのに、
なぜ自分の子供だと確信できるんですか?」と聞いて、
「それは嫁さんのこと信じてるからね。それに生まれた子供見れば自分に似てるってわかるよ」
「奥さんが自分のこと本当に裏切らないって信じられる?」
「うん、な、お前、俺のこと好きだよな?」
「うん」と奥さんが答えた。
「それに、万が一自分の子供じゃないってわかっても、今さら別の子供を交換しようなんて思わないよ。
遺伝子を好きになったわけじゃないからね」
と男性が言った。
彼女はへえーと不思議そうな顔をしていた。
その日のパーティは終わった。
後日、彼女からメールが来て
「よその家庭を見物したかった。貴重な経験ができてよかったです」と全員にお礼していた。
それから数ヵ月後、彼女は転職した。
そして、例のパーティのしばらく前に、中絶していたことがわかった。