2009-07-10

ファイル

作文上手くなりたいです批評してください。

特に目的を持たずに商店街を歩きまわっていると、

路地裏に「この世の全てあります」という手書きの看板を見つけた。

私はとても退屈していたために、その看板に惹かれて、小さな建物の戸を叩いた。

「入っていいよ」と声がしたので、私は中に入った。

 玄関以外の側の壁に背の高い本棚がある、書庫のような小部屋だった。

そして部屋の真ん中で、感情の抜けたような表情の少年がつっ立っていた。彼は言った。

「よく来たね。僕は少年だけど、老人だ。」

意味は良く分からなかった。意味は無いのかもしれなかった。

「この世の全てが有るって?」

「何でもあるよ」

「……宇宙を作った奴の写真とか?」

「見たい?」

どうやら宇宙を作った奴の写真が見れるらしい。

下らないと思う反面、なんなんだこれは、面白そうだ、とも思っていた。

少年は大量の本の中から、全く迷うことなく一冊のファイルを抜き取った。

「ほら、これ」

それは緑色の空間で、光の粒が輪になっているという、良く分からない写真だった。

「……これが?」

「すごく頭がいいんだ」

私は妙に納得してしまった。

「へえ」

私がぼーっとその写真を見ていると、彼は独り言のように

「こいつら、宇宙よりもっとすごい物を作ったんだ。」

と言った。私は顔を上げて、

宇宙より凄い物?」

と聞いた。

彼は私に会ってから初めて、にこりと笑った。

「あっ、気になる?なんだと思う?」

「…分からない。教えてくれ。」

「それはね……」

彼はまた表情を隠して、言った。

「また今度ね。」

「教えてくれないの?」

今日はね。また明日来なよ。」

明日ここに来ても、この部屋はもう無いという気がした。

「あと二つだよ」

私は、特に日ごろ疑問に思うことなど無い人間だ。

宇宙より凄い物というのは気になるが、何故か教える気が無いようだ。

だから私が知りたいのは、この少年が何者なのかということだけだった。

「……いや、あと一つで良いよ」

「ひとつで良いの?」

「うん。ひとつで良い。」

「君は誰?」

彼は少し意表を突かれたようだった。

「僕が誰か?」

彼は言葉を選ぶように、少し黙った。

私は彼が話し出すのを待った。

「……僕は、『ファイラー』だよ。本当はもっと難しい言い方だけどね。」

ファイラー?」

「簡単に言っちゃうと、世界ファイリングする役割が僕に任されてるんだ。」

「誰に?」

「さあね…神様じゃない?」

神様か、変な仕事があるもんだ。」

「何の意味も無い仕事だよ」

彼は本当に何の意味も無いんだ、という顔をしながらつぶやいた。

私が少年に「まあ、頑張れよ。じゃあな」と言うと、

少年はセリフを棒読みするように

「また来てね」と言った。

私はそこを出た。不思議な体験だった。

きっと幻だったんだ、振り返ったらもう消えてるんだ、と思った。

しかし本当に消えていたらそれは寂しいので、

私はその場から去るまで一度も後を見ないように帰った。

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