2009-07-07

失恋

夜明けだった。始発の電車を僕は待ってた。足取りはどことなく虚ろで、とりあえず惰性で自宅への帰路を選択したに過ぎない。目は充血していた。端的に言えば逃げ出したかったんだと思う。

彼からその事を聞かされた時は、一瞬何も出来なかった。

いつもなら何かしら、表情の演技を欠かさないはずなのに。取り繕う事が出来なかった。僕、上手く笑えてるかな。

友人の幸福を祝う、良い奴のふり、できてるかな。どうやら彼は最近告白されたらしい。全く知らなかった。

そうだったんだ、良かったじゃんととりあえず答える。

まず頭に浮かんだのは、上手くこの場を何も無いように納めるようにしなきゃって事だった。

道化を演じる事。それが僕に与えられたミッション

そして彼女がやってきた。一見つがいのようには見えない。でも多分それはそう見せてるんだと思う。僕とこの二人の間には壁があるように思えた。

何だか、僕、すっごく滑稽だ。まあ、今までだって僕は滑稽だったと思うけど、そんなのってないよ。

幸せそうにしている二人に笑いかけ、酔っぱらったふりをしながら頭の中でそんな台詞を呟く。

長かった、結局夕方の7時から会って、そして終わったのは5時。やってられない、と半ばやけになっていたかもしれない。でも上手く笑えていたと思う。

ものすごくバカな振りをしてはしゃいだりした。なんだか頭の中に鉛があるみたいだ。本当はそうじゃないんだ、もっと別の言葉を言いたかった。

でも幸せそうにしてる二人を見てると、そんな僅かな抵抗心すら挫かれた。その隣に座りたかったよ。でも無理なんだよな。

君は彼を選んで、僕は選ばれなかった。それだけ。それだけなんだ。可笑しいな、僕、いつも取り繕ったり、嘘を付いたり、仮面付けたりするの、すっごく得意なはず、だったのに。

今日は無理みたいだ。いいや、とりあえず帰ろう。寝れば多分、忘れるはずだから。この持って行きようの無い気持ちも、多分取り去ってくれるはずだから。

始発が来た。人はまばらで、乗っている人は殆どは寝ていた。僕は後ろから3両目の電車に乗って、座席の端に座った。

そこで、誰も見てないのに、眠たいふりをした。腕を組んで、瞼を閉じて、頭を少し傾けて。

でも、溢れ出る涙だけは抑えられなかった。抑えられなかったんだよ。

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