2009-07-06

むなしさの通奏低音

友達が言った。

起業が成功しても、人に感謝されても、結婚して可愛い子供が生まれても、たぶんなにをしてもむなしさを感じてしまうと思う」

たしかに。僕もそうかもしれない。

「すごくつらいんだ。苦しい。なんであいつらはこのむなしさを感じないで楽しく暮らしていられるんだ」

新宿にある喫茶店からは、大勢の行き交う人達が見える。

みんな、笑っていたり、疲れていたり、悩んでいたり、楽しそうだったりする。

「ちょっと気を緩めると感じるんだよ。おまえ、そういうの感じないのか」と、友達は言った。

「もちろんかんじる」と、僕は言った。

「おまえも苦しいだろ」と、友達は言った。「そういうときどうしてるんだ」

「いいや。苦しかないよ。だからどうもしない」

と、僕は言った。

「ただ、耳を澄ますんだ。とても注意深く。それは、色んな音に混ざって聞こえにくい。食器を洗ってる音や、風の音、人の声なんかがあるとだめなんだ。でもそれはいつも流れてる。おまえもそういう耳を持ってる。」

「こわくないのか」

「心地いいんだよ。その音は」と、僕は言った。

「そうか」と、友達は言った。

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