僕が高校生の時、パックのツアーで東ヨーロッパに1週間ほどいたことがあった。
安いというのもあったが、主に僕がまだ高校生で親が心配したというのもあって、2人の相部屋だった。
相手の名前はあらかじめ聞いていたけれど、特に何も思わなかった。
名前はどう見ても男だし、態度も男っぽいが、外見はどう見ても女性。
最初は触れてよいやら分からず、とりあえず普通に接していた。あまり着替えるところは見ないようにしていたけれど、それでも見えてしまう。
下はトランクスをはいていたが、上はそれなりに大きい胸を支えるためブラジャーをしていた。
3日目くらいからだんだん仲良くなってきて、いろんな話をするようになった。
久しぶりにゆっくり同年代の人と話せると彼、彼女?は喜んでいた。
やはり大学ではいろんな目があって、男性とも女性ともうまく友達になれないらしい。
5日目の夜だったか、酒の力も借りて彼女はいろいろ話してくれた。
自身は男性のつもりだが、体は女性。大きくなる胸がコンプレックスなのだと言う。
何らかの理由で男性だと思い込もうとしているように見えた。
たしかに、その態度には違和感があって、外見だけならとても綺麗なのに、無理している感じが、男性も女性も遠ざけている感じがした。
「お前は女性だ。」と言われる度に傷ついたそうだ。
僕は彼女の話し相手になっていた。
最初の旅行の時はそれで終わったが、その後もメールのやり取りが続いた。
日本での住んでいる場所は遠かったからあまり会うことはなかったが、1年に1度、一緒に旅行に行く関係になった。
国内が多かったけれど、海外もあった。
最初の頃は彼女が主導権を持っていたけれど、英語があまり得意でないこともあって、海外では主に僕が案内することになった。
メールの文面も、まだ顔文字は出てこないけれど、少しずつかわいくなってきた。
彼女の心がだんだんと僕に向いているのも感じるのだが、僕には別に彼女がいる。
それぞれのことはそれぞれに内緒にしているから、そろそろハッキリさせないといけないと思っている。