2009-05-01

件の日

雨後の水曜日。その日はやたらと、消防車サイレンが聞こえていた。

何ヶ月かに一回来る、訳のわからない鬱の日がきた。

会社に行く前、PCで一作業終えた後、暗い気持ちになる。

シャワーにあたりながら、このまま死んでしまえれば

ものすごくいいんだろうな、生まれなおしたいなと

思いながら、いつもと違う鬱状態をどんよりとしていた。

結局、自分勇気が無かったから、死ぬことが出来ずに会社に向かう。

さっきまで、死のふちに立っていたと思い込んでいる人間が、

管理人に咎められるのを恐れながら、非常階段を音を立てずに降りる。

そこでは、普段聞いた事の無い黒電話のなる音。

正面には消防車、防毒マスクをつけたオレンジ色の服を着た救急隊員達がいた。

「この建物の六階で硫化水素が撒かれました。もし何か重大なことが起きたときのために

連絡先と会社を教えていただけますか」

冷静に答え、時間があまり無かったが、ゆっくりと玄関から出て行った。

建物の横で担架に乗せられて、酸素マスクをつけてぐったりとしているネクタイをしたサラリーマン

この人が自殺を図ったのだろうか。しかし、ネクタイをしているし、違う人なのだろう。

黄色い走査線を超えて、角を二度曲がると、いつもの日常がそこにあった。

一線を越えた、本人はどこへ行ったのだろう。勇気のある人。

今後の生活するうえでのリスクを拒否してまで、実行できた彼が羨ましい。

いつもは綺麗に見える隅田川今日は濁り、ドブくさい匂いを放つ。

ベンチで寝ているホームレス紫外線を浴びて、真っ黒な顔をしていた。

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