一週間前、なんとなく昔のケータイに記録されている受信メールを読み返していた。
懐かしくなって俺は、次の日どーでもいい内容のメールをその別れた彼女にしてみた。
「さっき、お前に良く似た人をパルコで見たんだけど人違いだったかな?」
送信した。
そしたら、返信はわりと早くきた。
「えー、それあたしじゃないよー。てゆーかひさしぶりだねー、全然連絡くれないんだもん。たまには飲みにさそってよー」
あっけらかんとしていて、なんか拍子抜けした。
「あぁ、そうだな。今度飲みにいこうや」
何回かやりとりして俺はメールを終わらせるつもりだった。でもあっちは俺からの連絡を喜んでいるようであり、なかなか中断はさせてくれなかった。
もう何回やり取りをしたか忘れた頃、あいつがパソコンの初期設定をしてほしいと俺に言ってきた。
そんな簡単なこと出来るだろと言ったが、本当に分からない様子だったので週末に設定をしに行くと告げた。
そして週末になるにつれて緊張している自分がいることに気づいた。何かを期待しているような、でもそれを自制して普通に振舞おうとする自分。
この気持ちが良く分からなかった。
週末。彼女が家まで迎えに来た。昔は運転なんて全く出来なかったのにさすがに5年も経つと人間変わるもんだ。
彼女の家に着き、部屋を見渡す。あの頃よりも綺麗な部屋になってた。そして俺は依頼されたパソコンの初期設定を黙々と始める。
その横でずっと見つめているあいつ。変な緊張感があった。俺からしたら簡単なことでも「すごーい」とか「知らなかったー」とか子供みたいな反応する。
あいつがずっと横にいたせいか、30分以上かかった。
とにかく無事終わらせて、ちょっと昔のことを話した。
付き合ってる期間楽しかったとか、一緒の職場で同僚に冷やかされたとか色々とね。
そして、あいつは言った。
「喧嘩別れしたことを今でも後悔している・・・」
俺も同じ気持ちだった。
でも、さすがに5年という月日は長すぎた。戻ろうにも戻れるもんじゃない。
お互いにそれぞれパートナーが居た。
でも俺はのこのこと、この場に来た。大義名分が出来たことを良いことにこの場に来た。
期待している自分がいた。
俺はその後ちょっと話して帰った。
気持ちが浮ついていた。今のパートナーを裏切った俺は罪悪感に苛まれた。一線を越えたわけじゃないが、なにかとても申し訳ない気持ちになっていた。
あいつと会ったさっきまでの時間は全部夢だった。そう考えて頭を切り替えた。
付き合ってきた相手を比べるのは良くないが、あいつはこれまでで一番の相手だった。でもすれ違ってしまったんだからそれはもう運命と思って割り切るしかない。
さて、俺は2ちゃんでもするかな。
5年前だとふつー電話買い替えててメール残ってないだろ。
買い替えても、以前使ってた機種を手元に残してたらメールの再読ぐらいはできるんじゃない?
よく最後まで聞いたな。