いや、小型犬だったかもしれない
運転していたのは夜遅くで、まわりは街灯も少ない場所だった
普段からそんなに注意していないわけでもないし、この日もいつも通り「注意して」運転しているつもりだった
そんな中、前方道路の真ん中でビニール袋?が風にたなびいているように見えた
ビニール袋と思っていた僕は「ビニールなら踏んでも平気かな」なんて思っていた
しかし近づいたときには、何か毛が生えたような? 生き物のように見えて……
「うわあああ!」と思わず声が出てしまい、慌ててハンドルを切った
ドン、と前輪が乗り上げた時の感触
そのまま進みつつバックミラーを確認すると、何かが動いているように見えた
後続の車両も慌てて避けている
一瞬、後ろの誰かが轢かないかな、そうすれば僕が最終的に悪かったことにならないのに、なんて思ってしまい、急いでその考えを振り払おうとする
次に思いついたのは、うちに居る猫のことだった。彼らは今どうしているだろうか? 同じように轢かれていないだろうか?
そういえば、小さいころ飼っていた猫があるときフッと居なくなってしまって、どこかに旅に出たのかなあ、なんて素朴に考えていたけれど、こういう風に惹かれてしまったんだろうな、と思った
あと、これは動物愛護法違反で、飼い猫なら器物破損も加わる感じなんだろうか、なんて思った
その後は、結局人間は肉食の際に動物を殺して生きているのだし、これはそれがわかりやすく形になったのだ、なんてわけのわからないことを考えていた
僕はとても混乱していたのだろう
気を紛らわせるためにラジオをつける
あそこでジタバタとしていたということは、その前にきっと轢かれて動けなくなってしまっていたということだ(だから僕のせいじゃない)
自分が轢いてしまった後も動いていたということは、トドメになったわけではなかったんだ(だから僕のせいじゃない)
そもそもあんなところにいるなんて、思いもしなかった(だから僕のせいじゃない)
もしくは、轢かれてしまっていたということはどうせ助からなかったんだから、あれがトドメになってくれていれば、とか
そんな考え方は間違っているのは良くわかっている
もっと注意して運転すれば、気づいて轢かずに済んだんだろうし、轢いたら轢いたでその状況を直視したくないなんて気持ちを押さえつけて、猫の安否を確かめるべきだったのだ(動物病院は急患を受け付けてくれるんだろうか? でも朝まで待って連れて行ってからでも平気な程度だったかもしれない)
でも、僕はそこから逃げ出して、頑張って忘れようとした
あれは悪い夢で、本当はそんな事故はなかったのだ
もし現実だとしたら、大いに反省し、もう二度と同じような事故を起こさないようにすればいい
でもそんなの、轢かれた猫にとっては全然関係ないし、どうでもいいことだ
その猫にとってはありもしない次の機会への反省なんていらないから、生きていたかったんじゃないだろうか
次の日、同じ場所を通ってみた
猫はそこからちょっと離れた場所で、息を引き取っていた
最後の力を振り絞ったのか、それとも誰かが寄せてくれたのかわからない
いや、後者でも何か出来たんだろう
端に寄せてあげて、保健所に連絡するとか、どこかに埋めてあげるとか(これは違法かも)
何か供養したりしてあげるべきだったのかもしれない
でも、僕は何もしていない
ただ罪悪感に苛まれて、悪いことをしたとか、何が出来ただろうかとか、運が悪かったとか
そういうことを悶々と考えるだけで、行動に移していない
目をそらしても問題は消えないのに、僕は目をそらしている
人を轢いてしまった時も、僕は目をそらして逃げるんだろうか?
それで「僕は目をそらしている」なんて増田に書いて、叩かれでもしたら、懺悔できたなんて思って満足するんだろうか
しかも「僕みたいなのが最低の人間って言うんじゃないだろうか」とか書いて、自分を卑下すれば十分だろうと思ったりするんだろうか
なんか頭の中がゴチャゴチャしていて、気持ちの整理が出来ていない
とりあえずここに何か書いていても何にもならない
明日も見に行って、まだそこに居たら、せめて、保健所に連絡してあげよう……