2008-10-03

子供

オレは自分に生殖能力がないと思っていた。

思い込んでいた。

ある時に高熱を出し、それ以来自慰をすると薄いものしか出なくなった。

怖かった。

まだネットに親しむ時代ではなかった。

調べたくなかったし、もちろん医者になんかかからなかった。

生物の授業ですら涙が出た。

生命誕生、なんかのビデオを見せられた時だ。

オレはオスとして失格なのだと思った。

人を好きになるべきだはない、とも思った。

ハエやサル植物なんかより価値がないのかと自嘲した。

…でも、オレは勝手だ。

女の子を好きになった。

ネパール旅行中に出会った、男前でサバサバした子。

日本人

帰国してからも会ったし、その思いは増すばかりだった。

怖かった。

意思を告げるのが怖かった。

振られるのが怖かったし、

それを納得させても決まって生物ビデオがオレを苛んだ。

――その子ともし。

――万が一うまくいっても、その子を裏切ることになんじゃねえ?

言い訳かもしんね。

振られるの怖いし。

でも、真剣に考えてた。

他人のことを、そんなに考えたのはたぶん後にも先にもない。

有り得ねえ。

もう今となってはきっかけは思い出せないけど、

オレはその子に告白した。

自分の気持ち。

そして、自分の欠陥。

かっこ悪いけど、泣いた。

彼女は、ポカンとしていた。

付き合うことはOKだった。

でも、オレがなぜ泣いているのかはまったくわからないようだった。

そりゃあ、そうだ。

でも、オレにとってはそれくらい大きかった。

それを言うことが同情を買うようで悩んだし、

それを言わなければ彼女を貶めるようで悩んだ。

悩んだ。

でも、言っちまった。

言わざるをえなかった。

彼女は優しかったように思う。

そしてオレたちは付き合うようになった。

記事への反応(ブックマークコメント)

ログイン ユーザー登録
ようこそ ゲスト さん