2008-08-31

「英和辞書を肩の高さまで持ち上げる。

手を放す。

ぼとんと落ちる。

なぜ?

重力があるから?

でも地球は回ってるんでしょ?遠心力とやらは何処へいった?

近くにでっかい太陽あるじゃん。なんで太陽に向かって落ちて行かない?

海の水でさえ、月の引力ていどで満ち引きしてるのに。」

彼はそう言って白い天井を見つめた。

まゆげを引きつらせながら怒っている。

足元にはさっき落とした英和辞書

馬鹿じゃねーの?」

俺はそう言ってその場を後にした。

後ろから彼の叫び声が聞こえる。

馬鹿にしてんじゃねえよ!お前、絶対わかってねえって!」

俺は間違ってなんかいない。

何もわかっていないのは彼の方だ。

いつも目の前の出来事に無関係なことばかりに関心を向ける。

そんな彼に愛想も尽きた。

俺は俺の道を行く。

だから、彼には邪魔させない。

こつこつと廊下を歩くと、目の前にドアが現れた。

明日へと通じるドアだ。

俺の人生にとって、次の一歩となるドアが開かれる。

満月、犬の遠吠えが響きわたる山奥の学校

俺はドアを開く。

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