2008-08-21

ファイト

俺は博士卒やからね 仕事をもらわれへんのやと書いた

男の子手紙の文字は とがりながらふるえている

高学歴のくせにと頬を打たれ 青年たちの眼が年をとる

悔しさを握りしめすぎた こぶしの中 爪が突き刺さる

私、本当は目撃したんです 昨日電車の駅 階段

就職に失敗した博士と 突き放した教授のうす笑い

私、驚いてしまって 助けもせず叫びもしなかった

ただ恐くて逃げました 私の敵は 私です

ファイト! 闘う博士の唄を

修士卒の奴等が笑うだろう

ファイト! 冷たい水の中を

ふるえながらのぼってゆけ

暗い水の流れに打たれながら 魚たちのぼってゆく

光ってるのは傷ついてはがれかけた鱗が揺れるから

いっそ水の流れに身を任せ 流れ落ちてしまえば楽なのにね

やせこけて そんなにやせこけて魚たちのぼってゆく

勝つか負けるかそれはわからない それでもとにかく闘いの

出場通知を抱きしめて あいつは海になりました

薄情もんが研究室に あと足で砂ばかけるって言われてさ

出てくならおまえの卒業も取り消しにしちゃるって言われてさ

うっかり燃やしたことにしてやっぱり燃やせんかったこの切符

あんたに送るけん持っとってよ 滲んだ文字 東京ゆき

あたし文系だったらよかったわ 力ずく教授の思うままに

ならずにすんだかもしれないだけ あたし文系に生まれればよかったわ

ああ 小魚たちの群れきらきらと 海の中の国境を越えてゆく

諦めという名の鎖を 身をよじってほどいてゆく

  • それなりの努力(無論研究する努力じゃなくて、就職する努力)した上でならかわいそうな話だけどね。 ただ博士に進学しただけなんだったらまぁ自業自得だろうね。

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