2008-04-06

Re:Re:責任転嫁も大概にしておけ

http://anond.hatelabo.jp/20080406172307

ちなみにこの契約の話も書いたんだけど、長くなりすぎたので削除した経緯があったりする。

まず、契約というのは必ず守らなければならない、というのは間違い。我々にそんな義務はない。

もし契約というのが破棄不可能なものであるなら、契約を結ぶことは非常に難しくなる。

だって将来どうなるかなんて誰にも分からないでしょ?

典型例が航空会社ダブルブッキング。我々がチケットを買うのは契約の一種。でも航空会社は我々の席を平気で別の人間にも売る。統計的に何人かはキャンセルすることが分かっているからだ。もし計算以上に搭乗客が来てしまった場合、会社は謝り倒して別の便を用意して我慢してもらう。

これだって立派な契約の放棄。「俺は絶対にこの便に乗りたいんだ!」と全ての客が言うなら、航空会社は今よりもはるかに高い料金を要求してくるだろう。そうしないと商売が成り立たないから。

契約を守るというのは大切なこと。尊重するのは当然で、そう教育されてもいる。でもね、契約に絶対はないんだよ。

我々が契約を守るのは何故?契約を破ると失うものが多いからだ。違約金を払ったり、評判を落としたり、契約を反故にされた相手から報復を受けることだってある。「だから」契約は守らないといけないんだ。商契約は「約束は守りましょうねー」という理屈抜きのモラルの話とは訳が違う。契約を守るのには理由があるんだ。

逆に言えば、これらのコストを甘んじて受ける覚悟があるなら、我々は契約を破棄していい。そのコスト以上に得られるものがあるなら、それは極当たり前で合理的な商取引だ。世の中にどれだけ契約の中途破棄が溢れてるか考えてごらんよ。それは社会が柔軟であることの証なんだ。この柔軟さを失って得られるものと失うもののどちらが大きいか、考えたことはあるかい?

多分プリンスホテルは(結果的に)予想以上に評判を落とした。最終的にプリンスホテルにとってこの判断が合理的だったのかどうかはわからない。でもそれはプリンスホテルの問題であって、我々がどうこう言う問題じゃない(株主でない限り)。逆に、「政治理念よりも顧客を優先した」ことを評価している人だっているかもしれない(politically incorrectだから大声ではいえないだろうが)。それもまたプリンスホテルの判断。それに、判断の正しさを後付でグダグダ言ったってしょうがないでしょ?

もちろん、契約当事者である日教組は大いにホテルを非難すればいいし、今後は使わなければいい。それは当然の権利。プリンスホテルだってそんなことくらい覚悟の上だろう。でもね、それは第三者がモラルを云々する問題じゃないんだよ。我々が考えるべきことは他にある。

前のエントリーでこのことを書かなかったのは、学者の彼にそんな契約概念についての理解を要求するだけ無意味だから。

"平時にしたことを彼らが合理化できるなら、戦時においては同じふるまいを合理化することは一層容易である。"

彼はこの文章で悲憤慷慨しているつもりかもしれないけど、こっちにはほんのわずかにも響かない言葉なんだよ。わかってねーな、と思うだけ。ホテルルワンダという全く次元の違う問題を無理やりつなげて、自分の感情を正当であるかのように見せるあざとさは鼻につくけどね。それ以上に、その我田引水すら論理的に成功してないことのほうが腹が立つ。学者なら論理的にものを語れよと。

だから、ホテルマンの信条とか、そういう定義も良く分からないような便利な言葉で彼らに(日教組にとって有利な)モラル押し付けるような主張には賛成できない。それが、前回書いた「社会の問題を個人の問題に還元してしまう」行為なんだよ。昔どこかの新聞事故を起こした電車の運転手に「風の呼吸を感じるべきだった」みたいなことを書いて失笑を買っていたけど、それも同じ。医療関係者に「命を預かる聖職だから」と全力以上を要求する今の風潮も同じ。必要なのはより安全な運行システム、より有効な救急体制、それに「言論の自由に守られて他人の言論の自由を侵害する」今回のようなケースを排除する法整備だろ?

聞こえがいいだけの不合理な言葉で、個人や法人に責任転嫁する風潮はもううんざりなんだよ。

  • でもね、契約に絶対はないんだよ。 (略) これだって立派な契約の放棄。 規約なんて読んだことないけど、例外も含まれた上での契約だろう。だったら破棄ではなくて、契約どお...

  • Re:の増田だが、まぁ、、いいか。 元増田はもう少し本を読んだほうがいいと思う。哲学から軽い本まで色々。これは友人としてのアドバイスだ。人に読んでもらう表現力と論理の展開の...

記事への反応(ブックマークコメント)

ログイン ユーザー登録
ようこそ ゲスト さん